筋量アップに適した体脂肪率とは?【桑原弘樹の栄養LOVE】




サプリメント実践的活用のスペシャリストである桑原弘樹さんが、サプリや栄養や肉体に関する疑問を解決する連載。第37回は、「筋肉がつきやすい体脂肪率」について。※この記事は2020年に投稿された記事を、再編集してお届けするものとなります。

■体脂肪率が高すぎても低すぎてもNG

脂肪も筋肉も、合成と分解が綱引きをしているという点で似ています。

筋肉を合成に向かわせるということは、しっかりとエネルギーを確保して、体内の栄養素を充満させるのが好都合となりますが、それは同時に脂肪の合成にも好都合な状態です。

逆に脂肪をどんどん落としていく際は、何かしらの方法でカロリー制限やカロリー消費量の増大を目指す必要があります。これは筋肉の合成にブレーキをかける側面があるので、体脂肪を落とすという行為は筋肥大には向いていない要素をはらんでいます。

では、やたらに食べて栄養素を詰め込んだら筋肉が増えるのかと言えば、そうではありません。要は、人がもっとも体調がよく力を発揮できる体脂肪率が、筋肉にとっても合成に向かわせる上でいい環境と言えます。

個人差はありますが、体脂肪率が一ケタのさらに下のほうになると、筋肉は維持するのがやっとでそこから大幅なバルクアップは望みにくいでしょうし、逆に体脂肪率が30%を超えると筋肉よりも脂肪がどんどん増える状況になり、筋肥大の効率は落ちていってしまいます。脂肪が多過ぎることでインスリン感受性(肝臓や筋肉などの臓器に対するインスリンの効きやすさ)が低くなって、バルクアップに歯止めがかかっていきますし、逆に脂肪が低すぎるとテストステロン(男性ホルモンの一種)が低下していってしまうのです。

バルクアップを目指すオフ期だからといって、ひたすら体重を増やしてもじつは筋量はさほど効率的には増えませんので、自身が快適に感じる体脂肪率(男性であれば一般的に20%程度)をキープしながらバルクアップに励むといいと思います。

よく、減量期に入ると筋量が増えるという人がいますが、おそらくトレーニング強度が上がっていくことと、体脂肪率は低くてもしっかりとカロリーを摂取しながらの減量をした場合だと思います。単に食べる量を減らした減量の場合は、残念ながらバルクアップは難しくなっていきます。


桑原弘樹(くわばら・ひろき)
1961年4月6日生まれ。1984年立教大学を卒業後、江崎グリコ株式会社に入社。開発、経営企画などを経て、サプリメント事業を立ち上げ、16年以上にわたってスポーツサプリメントの企画・開発に携わる。現在は桑原塾を主宰。NESTA JAPAN(全米エクササイズ&スポーツトレーナー協会 日本支部)のPDA(プログラム開発担当)。また、国内外で活躍する数多くのトップアスリートに対して、サプリメント活用を取り入れた独自のコンディショニング指導を行ない、Tarzan(マガジンハウス)など各種スポーツ誌の企画監修や執筆、幅広いテーマでの講演会など多方面で活躍中。著書に「サプリメントまるわかり大事典」(ベースボールマガジン社)、「私は15キロ痩せるのも太るのも簡単だ!クワバラ式体重管理メソッド」(講談社)、「サプリメント健康バイブル」(学研)などがある。プロフィール写真のタンクトップにある300/365の文字は、年間365日あるうち300回のワークアウトを推奨した活動の総称となっている。300日ではなく300回であることがポイントで、1日2回のワークアウトでも可。決して低くはないハードルだが、あえて高めの目標設定をすることで肉体の進化が約束されると桑原塾は考え、実践している。