人工肉について教えて【桑原弘樹の栄養LOVE】




サプリメント実践的活用のスペシャリストである桑原弘樹さんが、サプリや栄養や肉体に関する疑問を解決する連載。今回は、「未来の食材」と言われ、現在も開発が行なわれている人工肉について。※この記事は2022年に投稿した内容を、再編集してお届けするものとなります。

■世界の人口増加で起こる食糧不足の救世主?

日本は人口の減少が問題になっていますが、世界的に見た場合には人口は増え続けています。このまま人口が増え続けてしまうと、やがて食糧が足りなくなるという問題が生まれてしまいます。とくにタンパク質不足は現実味を帯びていて、そこで通常の肉に代わる人工肉に注目が集まっているのです。人工肉には大豆やえんどう豆のように、タンパク質リッチな穀物を使ってあたかも肉にしたようなものと、実際に肉の細胞を培養して作る培養肉とがあります。

牛にしても豚にしても育てるのには膨大な飼料が必要となり、また二酸化炭素の排出量も膨大になります。つまり、タンパク質不足を補うために家畜の数を増やし続けていくことには限界があるというわけです。そういった背景から人工肉の必要性が高まり、今後も増えていくと予想されます。

現時点での問題点は、植物をベースとした人工肉に関しては味の問題をどこまでクリアしていけるかだと思います。ただ、カニカマを目隠しして食べると本物のカニと間違えるほどであるように、このあたりの加工技術はかなり進化していますので、そのうち大豆と牛肉の識別ができなくなるような日がくるのではないでしょうか。培養肉に関しては、さらに技術的なハードルがあるかもしれません。しかしこちらに関してはより食糧やタンパク質不足の根本解決になりますので、さらなるスピードで技術革新が進むのではないでしょうか。

ここ最近の話題として、ホエイプロテインの原料の価格高騰が凄まじいです。これは主に中国が豚の飼料にホエイを使うために、大きく需給バランスが崩れたことに起因しているのですが、需要は大きくなっても一方の供給(牛の数)は増えていかないという問題も抱えています。ホエイ豚というおいしい豚肉に牛が使われているというなんとも皮肉なことではありますが、どちらも将来的には数が頭打ちになってしまい、それに代わって人工肉が増えていくことになるかもしれません。


桑原弘樹(くわばら・ひろき)
1961年4月6日生まれ。1984年立教大学を卒業後、江崎グリコ株式会社に入社。開発、経営企画などを経て、サプリメント事業を立ち上げ、16年以上にわたってスポーツサプリメントの企画・開発に携わる。現在は桑原塾を主宰。NESTA JAPAN(全米エクササイズ&スポーツトレーナー協会 日本支部)のPDA(プログラム開発担当)。また、国内外で活躍する数多くのトップアスリートに対して、サプリメント活用を取り入れた独自のコンディショニング指導を行ない、Tarzan(マガジンハウス)など各種スポーツ誌の企画監修や執筆、幅広いテーマでの講演会など多方面で活躍中。著書に「サプリメントまるわかり大事典」(ベースボールマガジン社)、「私は15キロ痩せるのも太るのも簡単だ!クワバラ式体重管理メソッド」(講談社)、「サプリメント健康バイブル」(学研)などがある。プロフィール写真のタンクトップにある300/365の文字は、年間365日あるうち300回のワークアウトを推奨した活動の総称となっている。300日ではなく300回であることがポイントで、1日2回のワークアウトでも可。決して低くはないハードルだが、あえて高めの目標設定をすることで肉体の進化が約束されると桑原塾は考え、実践している。