動物性(ホエイとカゼイン)と植物性の違い【プロテイン入門④】




第3回はホエイプロテインに、WPIとWPCがあることを紹介しました。第4回でも引き続き、プロテインを購入する際に気になる分類について、桑原さんが詳しく解説していきます。今回は動物性(ホエイとカゼイン)と植物性の違いについて。

プロテインにおいて動物性のタンパク質の代表的なものは「乳」で、植物性の代表は「大豆」といって間違いないでしょう。プロテインとしてどちらの原料を使用していてもアミノ酸スコアは100ですので、栄養価としてはいずれも及第点だといえます。

ただし、アミノ酸スコア以外の更に踏み込んだ指標として、生物価であるとか正味タンパク質利用率、消化性必須アミノ酸スコアなどといったところでの比較となるとすべて横並びとはなりません。ざっくりと言えば動物性の方が栄養価的には高いといえます。もっとも、一概に動物性といっても、乳もホエイとカゼインに分かれますし、卵白なども入ってきます。

中でもホエイプロテインは、タンパク質を構成しているアミノ酸組成が、カゼインなどに比べて優れています。とくにBCAAなどの構成比率が圧倒的に高くなっているため、アスリートや筋肉強化を目指している人には、大変人気の高いプロテインと言えます。

また栄養価とは別の観点で、吸収速度という比較もあります。あえてシンプルに結論だけをいうならば、栄養価的にはホエイ>カゼイン>大豆となり、吸収スピード的にはホエイ>大豆>カゼインとなります。チーズやバターといった乳製品の原料になるカゼインは、固まりやすく吸収スピードが遅いので、長時間にわたって血中アミノ酸濃度を維持できます。時間にしてホエイが約2時間、カゼインは6~8時間と言われていますから、カゼインの場合はほぼ普通の食材と変わらないスピードと言えます。

吸収スピードに関しては速ければ速いほどいいというわけではなく、摂取シーンにおいての使い分けという事になってきます。例えば、トレーニング直後などであればホエイがおすすめですし、食間などであれば大豆やカゼインのほうが血中のアミノ酸濃度を長時間にわたって維持できるという点においておすすめといえるかもしれません。

また栄養価の面においては動物性が優れていると言いましたが、大豆は栄養以外の機能を有していたりもします。例えば食後の熱産生は大豆が優れていたり、大豆タンパク質のβコングリシニンは中性脂肪を下げたりという効果が期待できます。また、ビーガンの方でも大豆であれば対応できます。

このように摂取シーンや目的に応じて、ホエイ、大豆、カゼインは使い分けるというのが一般的です。


桑原弘樹(くわばら・ひろき)
1961年4月6日生まれ。1984年立教大学を卒業後、江崎グリコ株式会社に入社。開発、経営企画などを経て、サプリメント事業を立ち上げ、16年以上にわたってスポーツサプリメントの企画・開発に携わる。現在は桑原塾を主宰。NESTA JAPAN(全米エクササイズ&スポーツトレーナー協会 日本支部)のPDA(プログラム開発担当)。また、国内外で活躍する数多くのトップアスリートに対して、サプリメント活用を取り入れた独自のコンディショニング指導を行ない、Tarzan(マガジンハウス)など各種スポーツ誌の企画監修や執筆、幅広いテーマでの講演会など多方面で活躍中。著書に「サプリメントまるわかり大事典」(ベースボールマガジン社)、「私は15キロ痩せるのも太るのも簡単だ!クワバラ式体重管理メソッド」(講談社)、「サプリメント健康バイブル」(学研)などがある。プロフィール写真のタンクトップにある300/365の文字は、年間365日あるうち300回のワークアウトを推奨した活動の総称となっている。300日ではなく300回であることがポイントで、1日2回のワークアウトでも可。決して低くはないハードルだが、あえて高めの目標設定をすることで肉体の進化が約束されると桑原塾は考え、実践している。