BCAA、EAA、HMBなどはプロテインの代用になりますか?【プロテイン入門⑯】




日々のトレーニングにおいて、活用する方も多いであろうサプリメント。VITUP!でも以前、BCAAやHMBなどについて、桑原さんに紹介していただいたことがあります。今回はそんなサプリメントがプロテインの代用になるかについて、桑原さんに解説してもらいました。

どれもプロテインとは関連性の深いサプリメントなので、代用がききそうな感じをうけるかと思いますが、完全な代用は難しいでしょう。

まず一番プロテインに近いのはEAAですね。とくに、血中のアミノ酸濃度はEAA濃度といってもいいくらいです。ただし、プロテインに含まれている20種類のアミノ酸のうち、体内で合成できない9種類の必須アミノ酸をEAAで摂取することは、プロテインを飲むという行為と一部かぶっています。

中でも、大きな違いのひとつは吸収速度です。プロテインもホエイ、ソイ、カゼインと吸収速度に違いがありますが、もっとも速いホエイであっても2時間近くかけて血中アミノ酸濃度を上げるのに対して、EAAは20~30分で上がってくれます。吸収速度が速いというのはメリットでもありますが、同時にすぐに下がってしまうというデメリットも併せ持ちます。

また、摂取する量もアミノ酸の場合は一度に何十グラムという訳にはいきません。EAAとプロテインは摂取シーンに応じて使い分けをするものであって、代用をするものではないといえます。

BCAAはEAAの中のバリン、ロイシン、イソロイシンという位置づけになりますが、よりプロテインから離れていきます。なぜなら、BCAAだけでは体タンパク質に必要なアミノ酸が揃ったことにはならないからです。一方で、BCAAは筋肉の主原料となるアミノ酸であり、筋肉の分解を抑えるなど独自の機能を有しています。そのため、血中アミノ酸を高くした上で、トレーニングや運動に絡めてBCAAを摂取するといいと思います。つまり、EAAともまた別の位置づけとなり、EAAとBCAAもシーンに応じて使い分けるというのが理想的です。

HMBはさらにプロテインから離れていきます。これは、BCAAの中のロイシンというアミノ酸から作られる物質なので、一応アミノ酸の一種的な位置づけにはなりますが、アミノ酸のような栄養としての価値はありません。ただし、筋肉を合成に向かわせるという機能を有しているため、サプリメントとしてはとても面白い存在です。よく「BCAAを飲んでいるからHMBはいらない」とか、逆に「HMBを飲めばBCAAはいらない」というような声も耳にしますが、まったく別ものとして考えたほうがいいと思います。そもそもロイシンからもHMBは5%しか作られず、ロイシンが細胞内で代謝される場所とHMBが合成される場所も異なります。これは、HMBはロイシンから派生されるものではあるものの、ロイシンの本来の役割はHMBを作ること以外にあるということを物語っているのだと思うのです。

わかりやすくするために栄養と機能というキーワードで分類をするならば、プロテインは栄養そのもの、EAAはほぼ栄養、BCAAは機能を中心とした栄養、HMBは機能そのものといった分け方になります。


桑原弘樹(くわばら・ひろき)
1961年4月6日生まれ。1984年立教大学を卒業後、江崎グリコ株式会社に入社。開発、経営企画などを経て、サプリメント事業を立ち上げ、16年以上にわたってスポーツサプリメントの企画・開発に携わる。現在は桑原塾を主宰。NESTA JAPAN(全米エクササイズ&スポーツトレーナー協会 日本支部)のPDA(プログラム開発担当)。また、国内外で活躍する数多くのトップアスリートに対して、サプリメント活用を取り入れた独自のコンディショニング指導を行ない、Tarzan(マガジンハウス)など各種スポーツ誌の企画監修や執筆、幅広いテーマでの講演会など多方面で活躍中。著書に「サプリメントまるわかり大事典」(ベースボールマガジン社)、「私は15キロ痩せるのも太るのも簡単だ!クワバラ式体重管理メソッド」(講談社)、「サプリメント健康バイブル」(学研)などがある。プロフィール写真のタンクトップにある300/365の文字は、年間365日あるうち300回のワークアウトを推奨した活動の総称となっている。300日ではなく300回であることがポイントで、1日2回のワークアウトでも可。決して低くはないハードルだが、あえて高めの目標設定をすることで肉体の進化が約束されると桑原塾は考え、実践している。