なぜランニングは続かない?大事なのはランニングのイメージを変えること




健康やダイエットのために始める人も多いランニング。しかし、いざ始めたものの何かしらの理由で、長続きしなかったという人も多いのではないでしょうか。そこで今回は、学生時代は箱根駅伝に出場した経験を持つ山田賢児トレーナー(Y personal training gym)にインタビュー。まずは挫折しやすい理由とランニングの効果について。

最初はハードルをものすごく下げていい

――さまざまな方が運動不足解消や健康のために始めることが多いランニングですが、長く続かずに挫折してしまいがちなイメージもあります。途中で諦めてしまう原因として、どんな理由があるのでしょうか。

山田 さまざまな理由が挙げられますが、そもそもランニングが続けられなかった人は、大きく二種類に分けられます。一つ目は、続けているうちに体や足を痛めてしまって、できなくなってしまった人。これは続けたいと思っていたけど続けられなかった人です。二つ目は、たくさんやらないと効果がないと思って、ハードルを高く設定しすぎてしまった人。こちらはやり始めたけど挫折してしまった人です。

――確かに、ランニングはある意味、筋トレなどよりもハードルが高いという感じがします。

山田 そう感じるのは、学校の体育が関係していると思います。日本の教育では体育が必修であり、皆さんも授業の中で走ったことがあると思います。その時は、走り続けないと怒られたりしますよね。また、一般的なウェブサイトなどでも、「20分以上走らないとダイエット効果がない」という情報もよく見かけます。そうした学生の時のきついイメージがあり、長く走らないと効果がないという情報を鵜吞みにしてしまうと、やはり続けるのがつらくなってしまいます。そして、無理してやった結果、足を痛めるということにもつながりやすいのです。

――まずは、「ランニングはきついもの」というイメージをなくしたほうがいいのですね。

山田 はい。「疲れる」と思っているとやりたくなくなってしまいますよね。僕だって、つらいと思うことは続けられません。だから、最初はハードルをものすごく下げていいですよ。それを継続していけば、結果的に走れる距離が伸びていきますから。

大事なのは“1分以上走らない”こと

――具体的に、どのくらいから始めればいいのですか。

山田 まずは、距離よりも時間を優先して考えます。時間を目標に設定すると、体力がある人もない人も、感じる負荷は同じになります。これからランニングを始める人と、大会に出場するようなランナーだと走る速さが違うように、1kmを走るのでも、余裕で走れる人もいればつらいと感じる人もいます。時間を目標に設定することで、速さが関係なくなるので、無理をする必要がなくなります。また、ただ走り続けるわけではなく、例えば、2分ウォーキングして1分走るというサイクルを1セットとして、このセット数を増やしたり減らしたりして調整するのもいいでしょう。そして、体力に自信がない人は、1分間のランニングを目指しながら、「もうきついから30秒でやめちゃう」でもいいと思います。

――30秒でいいんですか!?

山田 いいですよ。むしろ、1分以上走らないことが大事です。なぜかというと、「足が痛くなる」「つらい」というイメージを払拭してほしいからです。ランニングをしている時間が短ければ、もちろん足は痛くなりにくいし、つらさも軽減されますよね。でも、ランニングはできているのです。これをいきなり「3分にしよう」「10分にしよう」と、走る時間を伸ばしてしまうと、結局つらくなったり足が痛くなったりしてしまいます。もちろんこれは走り始める時の話なので、慣れてきたらセット数を増やしたり走る時間を伸ばしたりして、レベルを変えていけばいいんです。

――継続していくことで、徐々に成長していけるわけですね。

山田 そうですね。今までほとんど走っていなかった人が数十分間走り続けるのは、相当きついと思います。でも、1分以内であればそこまできつくもないと思いますし、その後に2分間のウォーキングの時間もあるので、その間に回復もできます。これを10分やれば10分間の有酸素運動になりますし、20分やれば20分間の有酸素運動になります。こうして有酸素運動をする時間を増やしていけば、自然と体力がついてきます。

――私自身もランニングはほとんどやっていなかったのですが、少しやってみたいと思ってきました。

山田 ありがとうございます(笑)。ちなみに、この体力というのは、筋力と持久力の組み合わせのことです。体力がつくことで行動力が上がれば、自分にも他人にも優しくする余裕が生まれます。例えば平日の仕事終わりに遊びに行く余裕とか、家族に優しくする余裕とか、そういったメリットは人生を豊かにしますよね。もちろんダイエットや減量にも効果がありますし、その他にも体調の改善やストレス発散もできます。肉体的な変化の他に、日々を楽しく過ごすためのメンタルを整えるという面など、ランニングを継続することのメリットは数知れないと感じています。

★次回はランニングフォームや必要な道具について

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山田賢児(やまだ・けんじ)
千葉県出身。学生時代は陸上選手として活躍し、東京農業大学在学時に箱根駅伝に2回出場。その後3箇所のジムで指導を経験し、2021年に東京都、飯田橋に「Y personal training gym」をオープンさせた。ランナー経験を生かした有酸素運動指導のみならず、2014年の東京都北区フィジークでも入賞を飾るなど、ボディメイクにも取り組む。有酸素運動、ボディメイク、栄養指導の3つの側面から健康にアプローチする。
(所有資格)管理栄養士、フードスペシャリスト、加圧トレーニングインストラクター、加圧トレーニングサイクルインストラクター、日本ストレッチング協会ストレッチングトレーナーパートナー、日本ボディートレーナー協会整体師。

取材・文/シュー・ハヤシ