まだ大会に出るモチベーションが続いていた
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――2019年の日体大4年生時の全日本学生選手権とジュニア選手権以来、3年ぶりにボディビルの選手として昨年は日本選手権にエントリー。初めて日本最高峰の舞台に立った感想は?
「雲の上の人というか、神のように思っていた方々と同じバックステージにいるだけで自分の中で興奮するものがありました。実際にステージに立って比較審査を行なう中でも、自分がそこにいても笑われるような状態ではない、ここにいてもいいというレベルにたどり着いたのだと嬉しく感じる部分もあったのも事実です。1次ピックアップ落ちで結果は伴わなかったですが、憧れていた先輩たちが立っていた舞台に自分が立てたこと、それ自体が嬉しい出来事でしたね」
――師である岡田隆先生、日体大の後輩である相澤隼人選手も出場していました。
「本当にそれも感慨深いというか、信じられないことです。隼人とは学生のときに2年間、関東学生選手権、全日本学生選手権で並んできましたが、自分が卒業するときに『もう隼人と並ぶことはないかもね、出れても十年後くらいかな』みたいな話を自虐的に笑ってしていたんですよ。なので、同じ大会に出られるというのがこんなに早くやってきて、そこに岡田先生もいるというのが本当に信じられないことだなと」
――11月にスペインで行なわれた世界選手権を経て、12月のゴールドジムジャパンカップにも出場。今年4月からは研究活動のためにイスラエルに渡る岡田先生の最後の国内大会であったのも出場を決めた理由かと思いますが、いかがですか?
「もちろんそれもありますが、自分の気持ちがハイになっていたというか(笑)。あのときは楽しくボディビルを続けることができていましたし、シーズンが長くなりましたが、そこまで続けることがまったく苦ではなかったんです」
――楽しいから続ける、シンプルで一貫した考えだと思います。
「日本選手権から世界選手権にかけた期間は情熱を燃やしきった期間になりましたが、何を食べていい、何をやってもいい状態になったときに、あまりにも刺激がない生活がつまらなく感じてしまったのも理由の一つです。帰国して皆が普通の食事をする中で、ゴールドジムジャパンカップ出場を決めていた岡田先生だけは減量食を続けていて、『まだ続けてるんですか?』みたいにちょっとからかいながら話していたんです。でも、まだ目標を持っている人を目の前で見て、内心では羨ましいなと思っているところもありました。そういう日々を過ごす中で、『今年もう一回大会に出るモチベーションがある』と自分の中で判断して、出場を決めました。また、岡田先生が日本の大会に出場するのはジャパンカップで一区切り、来年から海外へ行くと知っていたので、最後の大会を盛り上げられたら良いなという思いもありました」
――学生時代からの師である岡田先生は、五味原選手にとってどういう存在ですか?
「背中を見せて引っ張ってくれる存在で、その背中を追いかけることで、自分はここまでこれたという実感があります。自分の中の限界を人は決めてしまいがちですし、周りのレベルによって自分の限界が決まってしまう面もあると思います。そのような中で、自分のレベルをかなり上まで引き上げてくれた存在ですし、自分が感じる限界は岡田先生の背中を見ることで自ずと高くなっていき、その結果いろいろなことに挑戦できるようになったと思います」
(後編に続く)
取材・文/木村雄大
写真/木村雄大(大会写真)、林嵩(インタビュー写真)
五味原領(ごみはら・れい)
1997年12月26日生まれ。2017年、大学2年生時に日本体育大学バーベルクラブ(現ボディビル部)に入部し、ボディビルをはじめる。2018年の関東学生ボディビル選手権で大会デビューし、4位入賞。同年の全日本学生ボディビル選手権では3位、北区オープンボディビル大会で初のタイトルを獲得。日体大卒業後はスタジオ・バズーカ自由が丘店の店長を務め、トレーナーとして活動中。
【主な戦績】
<2019年>
第54回全日本学生ボディビル選手権準優勝
第30回日本ジュニアボディビル選手権優勝
<2020年>
ゴールドジムジャパンカップ クラシックフィジーク オーバーオール優勝
<2021年>
第1回日本クラシックフィジーク選手権 171cm以下級優勝・オーバーオール優勝
<2022年>
第2回日本クラシックフィジーク選手権 171cm以下級優勝
ゴールドジムジャパンカップ ボディビル70kg以下級優勝