フィットネス界の新たな可能性。AIを駆使した近未来型トレーニング




近年はさまざまな分野で発展しているAI。もちろん、フィットネス界も例外ではありません。はたして、AIはトレーニーにとって、新たな選択肢になりうるのでしょうか。今回は、AIがトレーニングの指導をする「Future Gym System」のデモンストレーションが都内で行なわれるということで、編集部員の私シュー・ハヤシが潜入してみました。

時間や場所を気にせずにトレーニングの指導が受けられる日はすぐそこ

革新的なトレーニングシステム「Future Gym System」を開発したのは、筑波大学の卒業生らによって立ち上げられ、オーストラリアに拠点を置くスタートアップ「Lifeform AI」社。アジアから優秀なテクノロジーをもつ起業家らが集まり、社会課題解決につながるビジネスプレゼンで競い合う国際的なイノベーション・アワード「アジア・アントレプレナーシップ・アワード」(AEA)に出場するなど、AIヘルスケア&フィットネステクノロジーの分野で唯一無二の技術力を誇るスタートアップです。

そんな彼らが生み出したFuture Gym Systemは、専用のマットの上で運動することで、数十名のプロトレーナーから収集した情報を基に開発された「AIトレーナー」が重心や姿勢などからトレーニング動作を評価し、一人ひとりに向けたフィードバックを行なうシステム。

ではさっそく、トレーニングを体験!……といきたいところですが、その前にまずはバランスチェックから。マットの上に立つと自分の重心が画面に表示されるので、重心をマットの中心に調整してテスト開始。真っすぐ立って5秒静止、前後左右に5秒ずつ体を倒し、柔軟性とバランスを計測していきます。

バランスチェックの結果がこちら。上下左右に点在している点は重心の位置を示しており、点のバラつきで体の安定、中心からの距離で柔軟性がわかります。私の場合、柔軟性に大きな差はないものの、体を左に倒した時に体がぐらついているということです。

バランスチェックも終わったところで、いよいよトレーニングへ。今回のデモでは、スクワット、デッドリフト、挙げ(アームカール)、ショルダープレスの4種目から選べるとのことで、スクワットとデッドリフトをチョイス。さらに、自重、ダンベル、バーベルから使用する道具を選ぶことができます。

AIトレーナーが画面上で見本となる動きを見せてくれるので、それを真似しながら行なっていくと、足の幅や位置、体のバランスなどを総合してトレーニングの評価が点数で表示されます。ちなみに、最初の私のスクワットの点数は70点……。地道にゴールドジムに通っている成果が出ているのか出ていないのか、高くもなく低くもないというスコア。ただし改善点はたくさんありそうで、AIトレーナーによると「体が前傾してしまい、重心がブレてしまっている」とのこと。さっそくこのアドバイスを基に再挑戦してみると、なんと90点という評価をもらうことができました!

この後にデッドリフトも体験してみると、スクワットでのアドバイスがあったおかげか、こちらも一発目で90点を記録。ちなみにこの点数はランキングにも登録されて他人と競うことができたり、トレーニングによるミニゲームも実装されていたりと、こうした点もFuture Gym Systemの特徴。「初心者でもトレーニングを楽しめるように」という開発者の思いが伝わってきます。

体験後に開発者のカルロスさんとカティアさんに話を聞いたところ、「パーソナルトレーニングに対して敷居が高いと感じている方でも、AIトレーナーならいつでもどこでもフィードバックをもらえるので、トレーニング初心者との架け橋になれたら」と語ってくれました。

今回はデモということで機能にまだ制限があるようですが、プロのトレーナーや理学療法士の協力によって科学的な知見から選ばれたおすすめトレーニングも教えてもらえるなど、今後さらなるプログラムの増強や、マットのみならずスマホだけでAIが判定してくれるアプリの開発など、さらなる展開も視野に入れているようです。

AIにすべてのトレーニングを任せられるような未来がやってくるのかはわかりませんが、AIトレーナーはフィットネス界の新たな選択肢の一つとなるのは間違いないと感じました。ジムに通わずとも、時間や場所を気にせずにトレーニングの指導が受けられる……そんな日々がいずれやってくるかもしれません。