ビキニフィットネスの究極は、力を入れなくても美しい体【コンテスト審査員が解説】




近年、トレーニングに励む女性が増えるようになり、「筋トレ女子」という言葉も頻繁に耳にするようになりました。筋トレ=美ボディが成立するのであれば、体づくりのヒントは、筋トレ女子が美を競い合う競技・ビキニフィットネスに隠されているのではないでしょうか。

そこで女性たちの体づくりの指針を知るべく、日本ボディビル・フィットネス連盟(JBBF)の辻本俊子専務理事に、コンテストにおける女性の評価基準について伺いました。

トップ選手は、力を入れなくても美しく見える

女子のコンテストは、ごつごつとした筋量が求められる「女子フィジーク」と、女性らしくしなやかで、バランスのよい体を競う「ビキニフィットネス」に分けられます。

両競技とも鍛えた体の美しさを競うものですが、一般女性があこがれる体に近いのはビキニのほうが近いかもしれません。「筋トレ女子人気No1の競技」と言っても過言ではないでしょう。力強さよりも華やかさ、しなやかで女性的な体のラインをつくるというのが、ビキニの競技者たちのテーマです。

ビキニの特徴としては、ポーズの時に力んではいけないというのがあります。たとえば昨年11月に情熱大陸にも出演した安井友梨選手は、優雅にステージに立っていても、しっかりと体のラインが出ていて、筋肉の形が際立っています。

オールジャパンフィットネスチャンピオンシップス2022での1枚。安井選手の美ボディは努力の結晶だ

力まなくても体のラインが出るというのは、鍛えられた美しい形の筋肉があるからこそできることです。トレーニングをしていなければ、力を抜いたらあの形は出てきません。それでいて、絞り具合はかなり皮膚と密接にして筋肉を際立たせ、細くてしなかやな体にすることで、理想的なビキニ選手の体型に近づくことができるでしょう。

その際、加えてポイントになるのがウエストの細さや、ヒップの丸み感だと思います。砂時計型ボディというと、イメージがつきやすいかもしれませんね。先述した部分をどのように磨いていけるかが、審査を勝ち抜くポイントとなるでしょう。

そのため、選手はオフシーズンにトレーニングをしてしっかりと筋肉をつける。その上で、ポーズを取る時にはリラックスした状態にして、体のラインが見えるような立ち方をするという流れです。そのためには、力を入れなくても美しく見えるところまで仕上げるということが必要ですね。

あとは、絞り具合や柔軟性も重要です。皮膚と筋肉が密接になっていることで仕上がりがよくなりますし、そういうところでかなり違いがでてくるかなと思います。柔軟性がないとポーズもカチカチに見えてしまうので、必要な要素になってくるでしょう。腰の柔軟性がないと女性特有のカーブラインが出なかったり、胸郭が硬いと胸を張る時にうまくいかないなど、いろいろなケースでネックになるかと思います。

ちなみに、そういったしなやかな体をつくるトレーニングは、扱う重量や追い込み方がポイントです。ビキニの選手だから高重量を扱わないわけではありませんが、それぞれのパーツを丁寧に整えるような鍛え方をしています。筋肉を大きくしたり、筋量をつけるためのトレーニングは高重量で限界まで追い込んでいきますから、ビキニ選手の追い込み方からも、体づくりの参考になる点があるでしょう。

◆次回は、女性にとってとくに大きなテーマである「尻トレ」について


辻本俊子(つじもと・としこ)

JBBF(公益社団法人 日本ボディビル・フィットネス連盟)にて専務理事、競技ルール委員会委員⾧、広報委員会委員長を務める。第1回東京クラス別ボディビル選手権46kg級優勝、第5回東京ボディビル選手権大会ミスの部優勝、社会人ボディビル選手権大会マッスルの部優勝、日本クラス別ボディビル選手権大会52kg級優勝、日本ボディビル選手権大会第10回女子の部優勝、ワールドゲームス(オランダハーグ)52kg級7位などの実績を持つ。

取材・文/森本雄大
写真/木村雄大