理想の筋肉のカット=「人体解剖図」に皮膚を被せた状態【コンテスト審査員が解説】




日本ボディビル・フィットネス連盟(JBBF)の辻本俊子専務理事へのインタビュー企画。前編では一般の方にとって馴染みがないかもしれない、筋肉のカットについて解説していただきました。後編となる今回は胸、肩、腕、脚など、各部位によってカットの出し方にポイントがあるのかを伺いました。

各部位に存在する筋肉を、まんべんなく鍛えることが重要

ほとんどの部位に共通するのは、その部位にある筋肉をまんべんなく鍛えるということです。大胸筋の中にも細かく言うといろいろな筋肉があり、筋肉を構成する数多の筋線維があります。

筋線維はゴムのようなものなので、それを収縮させることで筋肉が培われていきます。それがどんどん大きくなっていくと、一本一本の筋線維が太くなってくるので、それが筋肉の溝などにつながるのです。

わかりやすいのは、背中であれば広背筋や僧帽筋など細かい筋肉があって、それぞれが全部浮き出てくるような背中になっているとすごいなと思います。力をきゅっと入れると、筋肉のひとつの塊だけではなく、筋線維から血管まで浮き出てくるくらいに見えるというような状態です。

広背筋に注目すると外への広がり方や下部の発達具合など、出ている部分が多ければ多いほど評価は高くなっていくので、ただ広がればいい、目立てばいいというものではありません。全身にはいろんな筋肉がありますから、イメージとしては人体解剖図を見た時にそのまま目に入ってくるという感じですね。あの上に1枚皮膚が乗っているという状態がある意味理想です。

割れた腹筋のことをよくシックスパックと言いますけど、その6個の塊がぼやけて見えるのか、すごくくっきり見えるのかによって、仕上がりがいい・悪いという評価になるのはわかりやすいと思います。筋肉のカットを出す作業をしないとシックスパックにはならないというのと、そもそもで言うと筋肉が膨らんでこないと筋肉の溝をつくることはできません。筋肉を大きくし、丸みを出すこととカットを出すことを行なうことで美しい筋肉はつくれられるのです。

冒頭の質問に戻ると、部位ごとにカットを出す明確なポイントは存在せず、胸なら胸、肩なら肩にある筋肉すべてをまんべんなく鍛えることだと思います。

筋肥大が満足いくレベルまでできてきたというトレーニーの方は、ぜひ筋肉のカットを出すことにチャレンジしてみてください。


辻本俊子(つじもと・としこ)

JBBF(公益社団法人 日本ボディビル・フィットネス連盟)にて専務理事、競技ルール委員会委員⾧、広報委員会委員長を務める。第1回東京クラス別ボディビル選手権46kg級優勝、第5回東京ボディビル選手権大会ミスの部優勝、社会人ボディビル選手権大会マッスルの部優勝、日本クラス別ボディビル選手権大会52kg級優勝、日本ボディビル選手権大会第10回女子の部優勝、ワールドゲームス(オランダハーグ)52kg級7位などの実績を持つ。

取材・文/森本雄大