走れて強い“198㎝プレイヤー”の秘訣。「チームに安心感を与える存在になりたい」【張本天傑(後編)】




バスケットボールにおける、各選手に必要になるフィジカルを探る本企画。今回はパワーフォワード(PF)として一線級でプレーする、張本天傑選手のトレーニングに迫っていく。

ちなみにPFとは、漫画・SLAM DUNKでは主人公の桜木花道が務めるポジション。かつてはゴール下を主戦場とする黒子的存在だったが、現代ではバスケの花形と言われるほどプレーの幅が広がった。ゴール下で外国人選手と渡り合い、コートを縦横無尽に駆ける走力も備える――。ここでは、そんな張本選手のフィジカル強化について聞いた。

トレーニングのポイントは目的を明確にすること

PFとして大切なのは、コンタクトの強さと機動力だと話す張本選手。ゴール下では外国人選手に負けないフィジカルで体を張り、ひとたび外角に出れば素早いドライブ、鮮やかな3Pシュートで得点を演出する。そんな彼が大切にしているのが「目的を明確にしたトレーニング」だ。

シーズン中は時期によって筋力強化・維持のトレーニングを使い分ける。オフである夏は扱う重量を上げて筋力を増強し、シーズン中は重量やペースを落とすことで筋力維持に切り替えているという。

「トラップバーを使ったスクワットや体幹、ベンチプレスなど、直接バスケットの動きにつながるようなトレーニングを日々行なっています。シーズン中は約60試合あるので、ケガをしないことも重要だと考えています」

ちなみにトラップバーとは、通常直線のバーが六角形になった器具のこと。通常バーベルがある位置に体を収めることができ、デッドリフトやスクワットなどの種目でバーの中心と体の軸が近い状態をつくることが可能だ。通常のバーでは重心がぶれやすく、ケガのリスクもある下半身種目において、体の負荷を軽減する効果が期待できる。

トラップバーのイメージ。六角形の形をしていることからヘックスバーと呼ばれることもある

加えて体幹種目では、NBA選手も活用するカイザー社のファンクショナルトレーナー(多用途ケーブルマシン)を導入。ケーブルを用いて歩く、しゃがむ、捻るなど多様な動作を行ない、筋肉にスピードや連動性を与えることを意識しているという。

「競技に活きる筋肉をつけることが大切だと思っています。コンタクトに活きる下半身トレーニングにおいては、大腿四頭筋とハムストリングスを主に意識しますね。プッシュとプルのトレーニングを使い分けていて、前の日にスクワットで四頭筋のトレーニングをしたら、次の日はハムをルーマニアンデッドリフトで強化していくなどです。『最近はコンタクトでヒザがふらつくことが多いな』と思ったら、前ももを強化するためにプッシュのトレーニングを多くすることもあります」

自らのプレーを点検し、都度状況に合ったトレーニングで己をバージョンアップさせている。 そして、機動力維持のため走り込みを必ず取り入れることで、張本選手の強みであるオールラウンドなプレーが完成するのだ。

「フィジカルは日本にとって永遠の課題だと思うので、世界で闘うためにすごく重要だと思います」と張本選手。日本代表として数多くの強敵と闘ってきた経験から、屈強かつ動ける体をつくることが、自分がチームや日本代表に貢献するために必要不可欠なのだという。

「チームではこれからもオールラウンドにプレーしていきたいですし、外国籍の選手がケガをした時も、いつでもその穴を埋められるように鍛えていきたいです。自分の強みはゴール下とフォワードを両方こなせることなので、しっかりとチームに安心感を与えられる選手になりたいです」

冒頭で漫画の登場人物と張本選手を重ね合わせたが、彼が目指すのはオンリーワンのパワーフォワード。代わりのきかない「安心感を与える存在」として、今後もチームを支えていくに違いない。


張本天傑(はりもと・てんけつ)
1992年1月8日生、愛知県出身。中部大学第一高等学校、青山学院大学を経てトヨタ自動車アルバルク東京に入団。2016年シーズンからは名古屋ダイヤモンドドルフィンズに移籍した。日本代表としても豊富な実績を持ち、チームを支える存在となっている。198cm、105kg、ポジションはPF-SF。

◆張本選手が所属する、名古屋ダイヤモンドドルフィンズのHPはこちら

取材・文/森本雄大
写真提供/名古屋ダイヤモンドドルフィンズ