先日のベラトールの試合の際、メインとセミに出場する4選手は、プロモーションの一環として、ポスター100枚にサインをしました。時間はかかるし、手がすごく疲れるし、数が多くなるとサインを書くのも大変です。男子のバンタム級決勝戦に出る選手は、最初こそ丁寧に書いていましたが、後半はだいぶ適当になっていました(笑)。自分も100枚目は最後だから丁寧に書いても、真ん中あたりでクオリティが下がっていたと思います。もっと簡単なサインにすればよかった……と思いました。
実は自分のサインはプロになってから考えたものではなく、中学生時代に考えたものです。大きく「PATO(パト)」と書いて、それだけだと誰だかわからないので、横に「KANA」と書いています。今回はどうしてPATOなのか? サインにまつわる話を書いていきます。
「PATO」は自分の小学校高学年くらいからのニックネームです。一つ年上の幼馴染が飼っていた鳥が「パトリシア」という名前で、自分がそのパトリシアに似ているということから、「パトリシア」と呼ばれるようになりました。それが略されて「パト」です。
その幼馴染と同じ中学に進学して、同じ柔道部だったため、みんなの前で「パト」と呼ばれて、それが自然と広まっていきました。全日本合宿に行っても、同じ柔道部の子が「パト」と呼ぶため、そこでもまた「パト」になり、大学でも同じように「パト」が広まって、その呼び名が普通になっていった感じです。柔道界では「パト」が当たり前なのですが、最近は自分のことを「パト」と呼ぶ人がいないので寂しいです(笑)。
中学時代、「PATO(パト)」に対して「PESU(ぺス)」と呼んでいる友達がいて、「PATO」と「PESU」でふざけて作ったサインが現在のサインです。
最初に「P」を大きく書いて、顔も書いて「PATO」。プロデビュー後、最初は横に漢字で「渡辺華奈」と書いていました。今は海外の方にもわかるようにアルファベットで「KANA」にしています。漢字だと画数が多くて大変なのも、変えた理由の一つです。
サインの話で言うと、ジュニア時代に海外遠征に行ったときは、ふざけすぎていました。ジャパンのジャージーを着ていたので、現地の子どもたちからサインを求められることがあります。自分たちは有名選手ではないからといって悪ふざけをして、親の名前を書いたり、よく鼻くそをほじっていた後輩は「鼻くそ」と書いたり(笑)。今考えると頭が悪いというか、本当にひどい話です(苦笑)。自分の「PATO」は、まだいいほうだと思ってください。
話を現在に戻すと、今回のプロモーションのように、たくさんのサインを書くなら、もっと簡単なほうがいいと思うこともあります。過去には超簡単なサインにしようと思って、一文字で表すバージョンも考えたことがあります。それが右手に持っているサインです。
「かな」を一文字で表すパターンで、意外と完成度が高くないですか(笑)。今さらサインは変えられないですけど、自分としては結構いいサインだなと思っています。
ちなみに自分は過去に一度だけ、サインをもらったことがあります。小学生の頃に観に行った大会に、“ヤワラちゃん”田村(谷)亮子さんが来ていてサインをしてもらいました。有名人の方のサインをもらったのはその一度きりですが、良い思い出です。
以上、サインにまつわる話でした。
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渡辺華奈(わたなべ・かな)
1988年8月21日、東京都出身。7歳から柔道を始め、高校ではインターハイ2位、アジアジュニア優勝などの実績を残し、東海大進学後、1年時に全日本ジュニア優勝を飾る。卒業後、JR東日本へ入社し、オリンピックを目指して競技を続けた。2017年に同社を退社し、格闘家に転身。同年12月3日にデビューを勝利で飾ると29日にはRIZIN初参戦で実力者杉山しずかに勝利。2021年よりアメリカ格闘技団体「ベラトール」に参戦している。所属はFIGHTER’S FLOW