“筋肉だけで発展した世界”を描く筋肉アクション漫画『筋肉島』。作者の成田成哲先生曰く「究極のハイフィクション」だという本作には、超絶マッチョな人物が多数登場します。そんなキャラクターの筋肉はいかにして描かれたものなのか。自身も筋トレ好きという成田先生を直撃しました。
人体解剖図とボディビルで学んだ「筋肉の作画」
――作中には筋肉隆々なキャラクターが多く登場します。成田先生自身も体を鍛えられているということで、筋肉の作画がお好きなのでしょうか。
そうですね。もともと自分が描きたかったのが格闘漫画でして、そのために筋肉を上手く描く必要があったんです。筋肉を描くために自ら走り込んで脂肪を落として、自分の体を見本にしたりしていました。マッチョの描き方は勉強しつくしましたね。
――自分の体以外に参考にしたものはありましたか。
人体解剖図を一時期すごく勉強して、全身にある大体の筋肉を覚えました。その筋肉が実際にどう表皮を通じて外見に出るのかは、ボディビルの選手を見て研究しましたね。選手の方々の筋肉量は圧倒的ですし、体脂肪も極限まで落としますから参考になります。
――それもあって、ボディビルの世界観が作品に現われているのですね。具体的にどのような選手を参考にされましたか。
有名どころで言うと、IFBB(国際ボディビルディング・フィットネス連盟)の元プロボディビルダーであるロニー・コールマンやジェイ・カトラーなどです。サイズが大きいキャラを描くときは、アメリカで開催される世界最高峰のボディビル大会・ミスターオリンピアを見ていましたね。先述した2名の選手もミスターオリンピアに出ていましたので、よく参考にしました。とくにジェイ・カトラーが多いですが、お手本用にPCの壁紙はボディビルダーにしています(笑)。
――では作中に登場する族長2人は、まさにミスターオリンピアを参考にされたのですね。
その通りです。彼らはまさに“最強”というキャラなので、世界最高峰の肉体を参考にしました。ただ全員が同じモデルではなく、細身のキャラを描く時は、スタイリッシュな体が評価される日本のフィジークやスポーツモデルの選手を参考にしています。
――キャラクターによって、細かに見本にする選手を変えていると。
はい。たとえば、調査隊の司馬毅一矢はスポーツモデルを参考に肉体を描くようにしました。ヒサーノはまさにフィジークの久野圭一さんそのままですね。私自身も登場人物として作中に登場するのですが、いかんせん体に自信がないので服はほとんど脱ぎません(笑)。
――ご自身が筋トレをするのも、やはり作品のためでしょうか。
もともと体を動かすのが好きだったのと、作品づくりのためにも鍛えています。以前、ボディビル選手のチートデー(減量中に自由に食べていい日を設けること)をテーマにした『マッチョグルメ』という連載を描きまして、それで筋肉界隈の方々とつながったんです。そこで「成田先生は筋トレしないんですか?」と聞かれて、体のたるみも気になっていたので始めようかと思いました。
――筋肉に関連した作品を描いたことが、筋トレのきっかけになったのですね。
そうですね。『筋肉島』の構想もできあがっていましたし、『筋肉漫画の作者がマッチョでないわけにはいかない!』という思いもありました(笑)。以前、格闘漫画を描くために空手を習っていたこともあり、体を鍛えることに多少の縁があったのも大きかったですね。本格的に鍛え始めたのは約3年前からですが、そこから筋トレの魅力にはまっていきました。
(第3回に続く)
成田成哲(なりた・なりあき)
漫画家。集英社が運営する漫画誌アプリ『少年ジャンプ+』で漫画『筋肉島』を連載中。過去には、盲目の主人公を描いた格闘漫画『アビスレイジ』や、ボディビルダーのチートデーをテーマにした『マッチョグルメ』を発表し人気を博した。自身もトレーニングに励んでおり、SNSでは筋トレ風景などを発信している。
取材・文・写真/森本雄大
画像提供/集英社
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