バスケットボールにおける、各選手に必要になるフィジカルを探る本企画。今回は206cmの体躯を誇る日本人センター・太田敦也選手(三遠ネオフェニックス)に注目する。
ちなみにセンターとは、漫画『SLAM DUNK』では主人公チームのキャプテン・赤木剛憲(ゴリ)が務めるポジション。ゴール下の攻防の要となり、“チームの大黒柱”とも言える役割を担う存在だ。近年のBリーグでは外国籍センターが台頭する中、太田選手はセンターとしてゴールを守り続けている。そんな彼の強さはどのように生まれているのだろうか。
【動画】体を張ることは苦ではない。仲間を奮起させる献身的プレー
プロ入り17年目、積み上げ続けた脚力
長きにわたる現役生活。ゴール下の競り合いを制する要素として、強靭な下半身は切っても切り離せない。
「自分は上背があるので、重心が高い分当たり負けしやすいんです。なのでしっかりと腰を落として、重心は低く保ちます。相手からぶつかってくるのを待つのはしんどいので、むしろ自分から押し返すように体を当てて相殺する時もあります。激しいコンタクトに強くなることは、センターにとって永遠の課題です」
ゴール下での“我慢”の積み重ねと、学生時代から培ってきた走力。質実剛健な努力が実を結び、彼は日本代表として活躍するセンターへと変貌を遂げた(2011-2018年)。下半身という点では、コンタクトの他にも重要な要素がある。
「ステップワークもセンターにとって重要な要素だと思います。ガードのようなスピードは必要ないですけど、狭い中でターンをする技術など、そういう点のほうが大切ですね。ゴール下は一歩かわすだけでシュートまで行けるので、狭いスペースを活用できるステップはすごく必要だと思います」
練習前には5~10分ほどのラダーを実施し、習慣としてフットワークを磨いているという太田選手。繊細なステップワークも日々の鍛錬の賜物なのだ。
“戦場”で長く闘える理由
学生時代から頭ひとつ抜けてでかかった。彼はゴール下という戦場において、長い年月プレーを続けてきている。その中でも堅実に活躍できているのは、コンディショニングにも気を配ってきたことが大きい。
「不慮の事故は仕方ないと思いますけど、ケガを防いだほうが長くプレーできますし、出場機会も増えるのでメリットしかないと思います。センターはコンタクトの多いポジションなので、マッサージやセルフケアなど、コンディショニングは欠かさないようにしています」
ボディのケアはもちろん、内面からの健康維持も欠かさない。毎日の習慣として青汁を愛飲しており、栄養面からもコンディショニングを心がけているという。
体のケアに関しても、すべてはセンターとして闘い続けるため。ここまで体を張り続ける彼の根幹はいったい何なのだろうか。思いの片鱗が垣間見えたのは、マンガ『SLAM DUNK』の話題になった時のことだ。
作中で太田選手が好きなセンターは、冒頭で触れた赤木でも、“ボス猿”こと魚住純でもない。県トップチームの190㎝センター・高砂一馬だというのだ。作品ファンならほくそ笑むマニアックな人選も、彼のプレーを見れば頷ける気がしてくる。
「高砂って恵まれた体格でもなければ、派手なプレーをするやつじゃないじゃないですか。なのに県トップの高校のセンターを務めていて、体を張って他校のセンターを止めているんですよね。そういう姿がすごく好きなんです」
献身的にチームを支える姿こそ、心に描く理想のセンター像なのだろう。自己主張や欲求はいい意味で太田選手からは見受けられない。
「僕の中では点を取ったりダンクしたり、そういうものではないんです。自分の目指すセンターは、やっぱりゴール下で体を張って、相手のメイン選手を止められる存在です。あとはチームの点取り屋に気持ちよくシュートを打たせたり、チームの流れが良くなるような動きをしたいと思いますね。センターは泥臭く、縁の下の力持ちでいいと思っています」
チームのために体を張り続けられるのも、積み重ねたフィジカルの賜物だ。現役生活のゴールも見えつつあると言うが、目標はつねに上を向いている。
「まだBリーグで優勝できていないので優勝したいのと、できるだけ現役を続けたいですね。それこそ、歴代センターの中で一番続けてきたと言ってもらえるような、そんな選手になりたいと思っています」
息長く、それでいて力強く。現役生活の最後の日まで、彼はゴール下で体を張り続けることだろう。
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