ポイントは“無駄な動き”? 日常で全身を鍛えるコツ【パーソナルトレーナーが解説】




日常の中でできる、“ながらトレ”を澤木一貴トレーナーに解説いただく本企画。前回のインタビューでは、世の中が便利になった反動で、人は運動不足に陥りやすくなっていると伺いました。ただ、運動の重要性が高いとはいえ、ジムに行く時間が取れないという人も多いのではないでしょうか。そこで今回は、日常の中で全身を鍛えるコツについて伺いました。

ジムで鍛える時間より、日常のほうが圧倒的に長い

――前回のお話で、筋トレや運動の重要性について伺いました。ジムに行く時間がない人が、日常の中で全身を鍛えるにはどうしたらよいのでしょうか。

「本格的な強度を求めなければ、日常のあらゆるシーンで全身を鍛えることは可能です。階段は最高のトレーニングスポットですし、電車のつり革があればストレッチができたり、家事をする中でも取り入れられる動きはたくさんあります。体の機能を維持する上で大切なのは、やらない動きをなるべくつくらないことです」

――日常のシーンとは、たとえばどのような時にエクササイズが可能でしょうか。

「先ほどの家事で言えば、布団を畳む、洗濯を干すなども立派なエクササイズですよね。その他にも隙間時間でできる種目をストックしておけば、ちょっとした家事の合間に体を鍛えることができます。たとえば、お風呂ができるのをスクワットしながら待つ、カーフレイズをしながら料理をつくる、冷蔵庫を開ける時にわざと体を捻るなど、進んで動きを取り入れていくと、使わない部分はなくなるかと思います」

習慣の大切さを語る澤木トレーナー

――たしかに家の中でも、体を鍛えるチャンスはたくさんありますね。

「そうなんです。だから主婦の方は、家事をするだけでじつはものすごく体をつかっています。僕も高齢者指導でおじいさんとおばあさんを比較したことがあるんですけど、おじいさんは会社員としてずっと座って仕事をしている人が多いので、リタイアした後は体が動かない方が大半なんですよね。一方、おばあさんは家事をしているのですごく体が元気な可能性が高いです。日常的にいろいろな動きをしていることが大きいですね」

――先ほどおっしゃったように「やらない動きをなくす」ことが大切ということでしょうか。

「はい。無駄に動くことが健康への道だと思います。実際、ジムに行ってトレーニングをしている時間より、それ以外の日常の時間のほうが圧倒的に長いです。週1回・1時間だけジムに行って後は座ってばかりの人と、日常の中で活発に動いている人で比べたら後者のほうがはるかに健康ですよね。これは極端な話ですけど、日々の中でいかに動くかを考えられるようになれば、健康な体に近づくと思います」

日常の積み重ねが老後の体を左右する

――たしかにそうですね。日々の積み重ねの大きさを実感します。

「高負荷の筋トレをしなくても問題ありません。日常のちょっとした動きでいいですし、座り姿勢を改善するだけでも体に好影響があります。イスの場合はまず座骨で座ること。座骨というのは、おしりの下に手を入れた時に当たる、出っ張ったふたつの骨のことです。この骨を意識して座ることで姿勢が整い、骨盤の乱れなどを予防できますので効果絶大です。正しい姿勢を身につければ、座り時間が長い人はそれだけで大きな変化だと思います」

――根本的な姿勢などを改善しつつ、エクササイズの引き出しを増やして、日常を有効活用することが重要なのですね。

「そういった取り組みが非常に重要ですね。『最近腕を挙げていないな』と思ったら、電車のつり革でストレッチして脇を伸ばすなど、不足しがちな動作を日常生活で補う方法を探すと良いです。次回からは電車とオフィス、階段に的を絞ったエクササイズを紹介していきますので、ぜひ日常に取り入れてみてください」

取材・文/森本雄大
写真/シュー・ハヤシ


澤木一貴(さわき・かずたか)
1971年5月3日、静岡県出身。日本大学在学中にエグザス二子玉川でマシンインストラクターを務める。大学卒業後、パーソナルトレーナーと並行して、フジ虎ノ門整形外科病院スポーツトレーナー科(主任)、ヒューマンアカデミー東京校スポーツカレッジ(常勤講師)などを歴任。2010年にSAWAKI GYMを創設した。現在は早稲田本店、高田馬場店、沖縄北谷店を運営。トレーニングに関する数多くの著書も持つ、パーソナルトレーナー界の第一人者の一人。