両国国技館で行なわれた第38回わんぱく相撲全国大会(7月29日)。本大会は1985年開催の第1回大会以来、40年近く継続してきた歴史ある大会で、元横綱である貴乃花光司さん(前身のわんぱく相撲東京場所で優勝)や、元大関の豪栄道豪太郎さんなど、有名力士も出場したことで知られている。まさに角界を目指す若き力士たちにとってのあこがれの舞台と言えるだろう。
そんな「未来の力士」育成の一端を担うわんぱく相撲全国大会に、戦禍にあるウクライナを元気づけるため、11歳と12歳のふたりの少年が出場した。
出場したのは、今年の3月にウクライナ西部の都市・ルーツィクにて開催された「わんぱく相撲大会ウクライナ大会」で優勝した11歳のミコラ・ハラドキフ君と12歳のマカル・ユパトキン君。出場者の中でも比較的小柄なふたりは持ち前のガッツと巧みな技術で、自分よりも体格が大きいライバルを次々と倒し、代表をつかみ取った。
大会前日にはマカル君とミコラ君の激励会および記者会見が行なわれ、会場には衆議院議員の森英介さん、在日ウクライナ大使館外交官のインナ・イリアさんなどが列席。ふたりへの激励の言葉がかけられた。
また、ウクライナの人道支援を行なう一般社団法人ウスミシュカ理事の中條秀人さんも記者会見に同席し、「『ウクライナの子どもたちに元気と希望、そして笑顔を届けたい』という思いでウクライナ大会を開催し、その優勝者をわんぱく相撲全国大会に招待することを企画しました。今大会に出場するふたりには、日本で体験した貴重な経験の数々を故郷に伝えていってほしい。また、ふたりの活躍を通して『正しい努力を続ければ、どんな状況であっても夢をつかめるんだ』というメッセージを届けていきたいです」と、わんぱく相撲全国大会招へいについての熱い思いを語った。
また、ふたりに将来の夢について聞いてみると、「(相撲で)オリンピックチャンピオンになりたい」と、真っすぐな眼差しで答えてくれた。現在相撲はオリンピック種目に採用されてはいないが、将来的に五輪種目化をはたした際には、成長したふたりの名前が見られる日が来るかもしれない。
そして、大会に向けては「ウクライナ予選で闘った選手の分まで優勝を目指してがんばりたい」と熱い思いを口にした。
母国の思いを一心に背負い、ふたりは全国185の地区予選を勝ち進んだ106のチーム(モンゴル・ウクライナの2チーム含む)に勝負を挑んだ。
次回は大会当日の二人の闘いぶりと、会場で見せた二人の絆についてお届けする。
文・写真/中野皓太