バスケ日本代表と安井友梨が示した“信じる力”。奇跡を起こすウイニングメンタリティー




「信じていなければもう終わり。私たちは信じています」

8/19、FIBAバスケットボールワールドカップ2023開幕前の最後の強化試合後、バスケットボール男子日本代表のトム・ホーバスヘッドコーチが観客に向けて伝えた言葉である。その後、チームがどういう結果を残したかは言うまでもないだろう。

第2戦フィンランド戦では最大18点差をつけられながらも、奇跡の逆転をはたして歴史的1勝を手にすると、順位決定戦のベネズエラ戦でも第4クオーターで劇的な逆転劇を披露し、悲願のパリオリンピック出場権を大きく手繰り寄せた。

ホーバスHCが冒頭の言葉を発信したその日、「信じる力」と題したブログを更新したのが、ビキニフィットネス女王・安井友梨であった。

【フォト】信念の赤ビキニでステージに立つ安井の全身ショット

そこには、数日前にトレーニング器具を左足親指に落下させてしまい、粉砕骨折の重傷を負ったこと、数週間では普通に歩行するようになるのも難しくすぐに手術が必要であると医師から宣告されたことが、実直に綴られていた。

「骨折よりも心を突き刺す痛みの方がずっとずっと耐え難かった」

大会前日のブログで彼女はこう語っている。事故から3週間後に予定されている「オールジャパン・フィットネス・チャンピオンシップス」は、安井がこの日のためにすべてを捧げていると言っても過言ではないビキニフィットネスの日本大会であり、目標としている世界大会への切符がかかった大会でもある。欠場となれば、この1年目指してきたものがすべて水の泡になる……。

安井の決断は、「手術はしないで治療を続け、大会出場を目指すこと」であった。

“奇跡は、待っていても起こらない”
“奇跡は、自分から掴みに行くもの”

そこからの日々は彼女自身もブログでつぶさに書き留めてはいるが、その裏には、外からは見えない壮絶な戦いがあったことは想像に難くない。ただ一つわかるのが、周囲の誰もが“不可能”と思っている短期間でのステージ復帰を、彼女だけは実直に、まっすぐに、「信じて」いるのだった。“奇跡”をひたすら信じているのであった。

そして迎えたこの日――。9/9(土)、栃木県で開催された「オールジャパン・マスターズ・フィットネス・チャンピオンシップス2023」(35歳以上クラス限定の日本一決定戦)のステージに、安井はいつもと“ほぼ”変わらぬ姿で登場した。“ほぼ”というのは、やはり普段の安井とは少し異なる仕草がステージ上では見てとれたからだ。体重を支える足の親指を負傷しているのだから、本来はヒールを履いてまともに歩けるはずがない。相当な痛みを隠しながらそこにいるのは、やはり明らかだった。

それでも、安井友梨は安井友梨である。たとえ足を負傷してようと、7連覇中のボディやポージングは他を寄せ付けることすらなく、圧倒的な優勝と言って間違いないだろう。それ以上に、誰にも負けない強固な信念こそ安井友梨の強さであると証明したとも言える。

「できるかできないかではなく、やるかやらないか」

信じる力で、目標であったワールドカップ出場権を勝ち取った、ホーバスHC率いる男子バスケットボール日本代表。
信じる力で、ステージ復帰をはたし奇跡の優勝を手に入れた安井友梨。

決して口で「信じています」という言うだけではない。真の意味で己や周囲を信じ切り、行動に移したことで、彼らは願いをかなえたのである。

「今日は全国で応援してくださる皆さんと一緒にステージにあがらせて頂きました」

大会後すぐにブログを更新した安井。本来であればブログを書く時間も惜しんで治療や回復にあてたかったであろうが、それと同じくらい、いの一番にこの言葉を伝えたかったのだろう。

9/10(日)は年齢無制限の日本一を決定する「オールジャパン・フィットネス・チャンピオンシップス2023」に出場する。再び、奇跡を起こせるか?

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