「第3回日本クラシックフィジーク選手権」(三重県伊勢市/9月17日開催)で五味原領が171cm以下級とオーバーオール優勝を達成し、今年度の日本一に輝いた。昨年はクラス優勝を達成するもオーバーオールを逃していたが、見事その座を奪還した。
“歩くギリシャ彫刻”と呼ばれる圧倒的な審美性を持つボディに、きりっとしたフェイスを持ち合わせる五味原。「やっぱり、クラシックフィジークは五味原領だよね」と、大会後の会場ロビーでは、どこからともなくそんな声が聞こえてきた。彼の王者奪還は、観る者に安心感を与えた、そんな印象すらある。
コロナ禍の2020年、その年唯一の全国大会である「ゴールドジムジャパンカップ」で初めてクラシックフィジークの頂点に立つと、翌年に日本ボディビル・フィットネス連盟(JBBF)初主催の選手権大会で優勝。クラシカルボディのアイコン的存在の地位を手に入れたが、2年目の2022年は、その座を喜納穂高に譲ることになった。
「昨年は王座を“守り”のような意識が強くあり、大会自体、何よりボディビル自体を楽しむことができないままにその日を迎えてしまっていました。振り返ると、気持ちがあまり入っていかなかったんです」
思えば昨年のステージ、彼の表情は常に強張っていた。それは彼なりのクラシックフィジークを表現するための演出のようなものだと思っていたが、そうではなかったのかもしれない。
「昨年と比べると、今年は“守り”の意識がなくなり、純粋にチャレンジャーとして大会に挑戦することができました。その結果、良い形で終えられたのですごく嬉しく、感情的になれた大会になりました」
開催3年目の競技ということもあり、今年は“新参者”の活躍が目立つ結果となった。岡典明(168cm以下級)、川中健介(175cm以下級)、扇谷開登(175cm超級)と、各階級王者は五味原を除き、全員が他競技からの転向選手でクラシックフィジーク初参戦。「去年からごっそり入れ替わってしまったのはちょっと寂しい面もある……」と話しつつも、「新しい顔が増えてレベルが上がっているのは肌で感じました。競技をすごく理解されている選手も多かった印象です。また、バックステージでは仲良く、和気あいあいとした雰囲気だったのも印象的でした」と振り返る。
ちなみに、基本的に自分に矢印を向けながら研鑽を積む五味原だが、「実は意識していた選手がいたんです」と教えてくれた。それは、同階級に出場した石坂恵一だ。2020年のマッスルゲート金沢大会に共に出場し、2競技でワンツーフィニッシュ。ボディビルでは石坂が、クラシックフィジークでは五味原が優勝した縁もある。
「今大会はいろんな選手がいましたが、もともと石坂選手は一度並んだこともあったり、以前から好きな選手だったんです。だから、エントリー表で名前を見つけて、心を燃やす要因となりました」
ボディビルディングを心から楽しみ、心身健やかな状態で頂点に立った五味原。次なる舞台は、10~11月にスペインで開催される「IFBB世界選手権」。そこで結果を残すことを目指しつつ、すでに来年も見据えている。
「正直、少しずつ良くなっているとは感じつつも、今年は自分の体に大きな変化を起こすには至りませんでした。ですが、今後、自分の体の変化をもっと楽しめそうな予感は今の時点でしています。来年もクラシックフィジークに出場する予定で、再び守りの立場にはなりますが、ボディビルを楽しみながら、インパクトのある変化をステージで見せたいと思います」