バリッバリ&極太の脚は超異次元。刈川啓志郎が学生王者戴冠も「課題の残る大会だった」




昨年の準優勝者であり、圧倒的優勝候補。その彼が頂点に立ったのだから、観る者にとっては「さすが」と感じた部分も多分にあったであろう。だが、大会後に話を聞くと、そこに笑顔は少なかった。

【フォト】圧倒的バルキー。学生レベルでは異次元のステージを見せる刈川

「1位という賞をいただけたのはうれしいですが、自分としてはちょっと課題が残る大会だったなと思っています」

そう切り出したのは、9/30(土)に埼玉・深谷市民文化会館にて開催された「第57回全日本学生ボディビル選手権大会」で頂点に立った、学習院大学3年の刈川啓志郎だ。昨年、初めてステージに現われると、サッカー由来の圧倒的な脚の太さを武器にステージを沸かせ、関東学生大会で優勝、全日本学生大会では宇佐美一歩(阪南大学卒)に次いで準優勝を獲得した。だが、この日のステージでは、どこか納得のいっていないような表情を時折見せていた。

「絞りと、水分と塩分の調整において『うーん……』という部分が自分の中にもずっと残ったままステージに立っていました。それがステージングに表れてしまっていたのかなと思いますし、見ている人にもわかってしまったのというのは反省点です」

表彰式後に審査委員長の臼井オサム氏が講評を行なうのがこの大会の恒例だが、その中でも一番最初に触れたのが刈川について。「彼は1位を獲りましたが、本来の彼はこんなものではないはずです」と、例年は大会全般について触れる中で、今年は名指しして取り上げるほどであった。

ただしそれはダメ出しではなく、今後のボディビル界の未来を担う刈川への期待の裏返しであるのは間違いない。本人は反省の表情を浮かべるが、学生とはいえ甘い状態で頂点に立てるほど簡単な場所ではない。甘い部分がありながらも、それをカバーする力が彼に備わっていたからこそ獲れた優勝である。

「去年よりも、上半身は確実に良くなりました。もともと脚には自信があるので、ボディビルに必要な上半身と下半身のバランスがとれてきたことで、“勝てる体”には近づけたのかなと思います」

毎回こだわっていると以前のインタビューでも語っていた、決勝審査の1分間のフリーポーズにも秘訣はあった。

「今回は、きれい、激しく、きれいという波をつくる構成にしました。ただ絞りが甘いという認識はあったので、自信のあるバルキーさでごり押しするようなイメージでフリーポーズをとることを意識しました」

学生王者という、何としても手に入れたかった称号を勝ち取った刈川。来年以降は、一般部への挑戦がメインになりそうだ。

「僕は浪人生なので、年齢的には4年生と同い歳です。学生ボディビルは“4年間の青春”だと思っているので、来年そこに自分がいるのはちょっと違うかなと。JBBF(日本ボディビル・フィットネス連盟)のジュニアボディビル選手権(23歳以下の日本一決戦)や、東京選手権などに専念しようかなというのが今の考えです。ただ、学生大会は掛け声で盛り上がりますし、こんなに楽しい大会はないので……みんなが出ていいよって言うなら、出るかもしれません(笑)」

白熱のバトルを繰り広げた2位の依知川公平(国際武道大学)は4年生で今大会で卒業だが、3位で部分賞「胸」と「モストマスキュラー」を獲得した大島達也(日本体育大学)は3年、4位で部分賞「腹」を獲得し、名門・早稲田復活の星と期待される小原啓太は2年、臼井氏が「彼もこんなものではない」と名指しした5位の関西の雄・本多虎之介(大阪学院大学)も3年である。さらに、今年は一般部の大会を優先し、この日は運営委員としてステージを駆け回った坂本陽斗(日本体育大学2年)も「来年は出場しますよ!」と宣言。

彼らと再びステージで、完璧な状態で並ぶ刈川を見てみたい……それが本音である。

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