まさに「うつく椎名」。次世代を担うマッスルプリンスが美と剛が融合したステージを披露、ジュラシックカップ3位に




“魅了するステージング”とは、まさにこのことを指すのだろう。色気のある紫に髪の毛を染め上げた姿でステージに登場した椎名拓也は、ゆっくりと、流れるようにポーズをとっていく。曲は、『ONE PIECE』のオープニング曲「ウィーアー!」のアレンジバージョンだーー。

【フォト&ムービー】令和のマッスルプリンスが魅せた美と剛のフリーポーズ

10/29(日)に愛知・尾張旭市文化会館にて開催された「JURASSIC CUP(ジュラシックカップ)」で3位入賞をはたした椎名。2021年にジュニアボディビル選手権(23歳以下の日本一決定戦)で準優勝、翌年は東日本、千葉県、関東と各選手権大会を次々に制覇。2023年はさらなる飛躍へ……のはずだったが、大きな苦難が彼を襲う。

まず昨年の大会後に腹痛を発症し、過敏性腸症候群に。さらにジムで指を骨折、その日に盲腸炎が発症、治ったところでインフルエンザ、とどめの新型コロナウイルス感染と、怪我と体調不良のオンパレード。まともにトレーニングできない日々が続いた。

そんなときに、「ジュラシックカップに、俺の推薦枠で出ないか?」と声をかけたのが、大会主催者である合戸孝二であった。2021年にマッスルゲート静岡大会へ出場した際に出会い、その後に彼のもとへパーソナルトレーニングに足を運ぶなど、親交を深めてきた恩師と言える存在だ。椎名自身も自身のYouTubeチャンネルで“合戸愛”を語っており、そんなレジェンドからの誘いを断る理由はなかった。

「去年からずっと体調が良くなかったので、今年はJBBF(日本ボディビル・フィットネス連盟)の選手登録もせずに大会に出場していませんでした。ただ、合戸さんの推薦枠で出ると決めたからには、去年以上の体に仕上げる。減量もきつくてしんどい時間もあったのですが、やっぱり周りの方の存在が大きくて。それがあって、乗り越えられたのかなと思います」

非常に穏やかな口調ながらも、大会ではつねに順位にこだわり、強い闘志を秘める椎名。今大会でも、日本選手権ファイナリストの吉岡賢輝をも上回っての3位入賞であり、十分に称賛に値する結果と言えるだろう。しかし本人は、「目標を3位として決めていたのでそれは達成できましたけど、同じプロポーション型の喜納穂高選手や、ジュニア選手権で負けていた杉中一輝に再び負けたのはやっぱり悔しいです」と唇をかむ。

結果こそ3位であったが、もし彼が上位2人を上回った点があるとすれば、本人もこだわりを持っている1分間のフリーポーズかもしれない。定評のある美しさあふれるポージングは、合戸も「僕も彼から習わないとな……」と言うほどの抜群のセンスを備えており、この日も多くの観客や動画を見る者の目を奪った。注目ポイントは、ゆったりと“美”のポーズをとっていく中で突如BGMがストップしたシーンだ。椎名が指をパチンとはじくと、穏やかな曲調が一転、合戸が日本選手権で使用している勇ましいBGMへと切り替わり、表情も含めて“剛”のポーズがスタートした。この1分間は、合戸への感謝とリスペクトが詰まった、アーティスティックな一つの“作品”と言って差し支えないだろう。

YouTube上にアップされたフリーポーズ動画のコメント欄には「彼が頭1つ抜けてかっこよかった」「永遠に見ていられる」「椎名君みたいな美しい選手がどんどん増えてほしい」「まさに、うつく椎名」と称賛の声がずらり。横川尚隆のラストステージやお笑いステージなど競技以外の見どころも多かった一日であったが、彼のフリーポーズも話題の一つになったのは間違いない。

「フリーポーズで意識していること……第三者目線に立って自分を見て考えたときに、鳥肌が立つとか、見て美しいと思えるようなものを考えていました」と、大会後に話を聞いた際には言葉は少なめであったが、後に更新した自身のInstagramでは、「ステージでは言葉は要らなくて、一瞬で人を惹きつけ、感動を与え、ボディビル競技へ引き込む。僕にはその力があり、使命があると思っているので、これからもつねに人よりも一歩二歩先のステージングでたくさんの人を引っ張っていきたいと思っています」と熱い言葉を残している。

日本トップレベルの選手と並んでもそん色ないステージを披露しただけに、「来年はファイナリスト入りか?」と周囲の期待も大きくなるのは必然だ。

「ジュラシックカップによってここまでボディビルが盛り上がったのは、自分も競技者として嬉しいなと思いました。来年は日本選手権と、出場できれば日本クラス別選手権を考えています。もちろんジュラシックカップも。今日は、絞りの部分では良い感じだと感じましたが、他の選手と比べると、バルクがまだ足りません。そこを高めて、来年は大会に臨んでいきたいと思います」

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