「やっと1年が終わりましたね(笑)。長かったなぁ……」
大会後に声をかけると、そう漏らした茶屋葵。ステージ上での華やかな笑顔をこれまで何度も見て、感想を聞き、考えをステージ後に探ってきた。だがこの日、彼女は本当の意味での“安堵の表情”を初めて見せてくれたと感じる。なぜなら彼女はこれまで、自身も認めるシルバーコレクターだったから。常に、悔しさが残るステージを繰り広げてきた。
「ちょっと運動でもしよう」という軽い気持ちではじめたトレーニングに目標を持たせるべく、彼女は昨年、初めてSuper Body Contest(SBC)に参戦。まだエントリー数も多くない春先の予選大会だったこともあり、デビュー戦では金メダルを獲得し、華々しく存在感を見せた。だが、周囲もアクセルを大きく踏み込む11月の予選大会では、3カテゴリーにエントリーしてすべて2位。翌月の決勝大会「SBC FINAL」でも2カテゴリーにエントリーして共に準優勝。1か月で5つの銀メダルを手にして、2022年を終えることになった。
「去年は2位ばかり。だからFINALが終わったときから、今日のリベンジをつねに目指してきました。絶対にここで勝ちたいという、その気持ちで」
そうして迎えた12/10(日)、2023年のSBC FINALの舞台。トレーニング歴こそ浅いが、綿密なトレーニング計画と緻密な食事管理、そこに目指すべきところへ向けた強い意志も加わった彼女の体づくりは非常に論理的。SBCにおいて十分トップで戦える仕上がりの体でステージに臨んだ。
「鏡を見てポーズをって、『私はできている』と思っていましたが、舞台に立つと思っている姿とは違う形になっていた」と話していた昨年の反省点もクリア。まさにエレガント×セクシー、以前は『パキっ』という印象だったアームスの動きも改善され、やさしく、なめらかに。「今年は、練習でやってきたことが出せたなと思っています。フリーポーズも『決まった』という感触で、やりたいことはできました。体の調子も良かったですし、メンタル的な面も落ち着いていましたね」
その結果、筋肉美が求められるSBC部門では年齢別クラスを制覇。モノキニを着用するCOLLECTION MONOKINI部門ではクラス優勝に加え、総合優勝も達成。念願の金メダル2つに日本一の証のクリスタルも獲得した。
「今年4月の埼玉大会で初めてモノキニの部門に出場した際に、やはりポージングに課題があると指摘されました。SBC部門との違いは、ワイドさの表現力。腕を横に広げるポーズでも、あまりコンパクトになると、大円筋を出そうとしても広さが伝わらない。そのあたりが上手に表現できたのかもしれません。トレーニングだけ頑張ってもダメ、やっぱりポージングと両方を頑張ることで結果につながると実感しました」
大きな目標をクリアした茶屋。トレーニングを続けること、そしてステージに立つことで、人間的にも大きな成長にもつながったと言う。
「私は性格的にすごく心配性で、『今の私は大丈夫かな?』って不安になり、すぐに自分と他人を比較してしまって。大会の写真を見て、『この人は良い、私はダメだな』って思い続けていたんです。でも、『自分の敵は自分。人と比べている時点ですでに負けている』と気づくことができ、メンタル的に強くなったなと感じています」
来年の大会出場は未定とのこと。だが、トレーニングで得た体と自身の変化を、なくなく捨てるようなことはない。
「せっかくこれだけの体をつくることができたので、トレーニングは継続して、健康的なラインを維持したいです。あとは、チャンピオンになることができたので、憧れていただけるような存在になれればいいなと思っています」
悔しさいっぱいのシルバーコレクターは、もうそこにはいない。ステージを通じて体と心の強さを身につけた茶屋は、これからもセクシーに、エレガントに進化を続けていく。