帰ってきたあの笑顔。24歳のビキニ戦士、復活の源は「良い意味で妥協を知った」




柿夏芽がビキニ姿で初めてステージに立ったのは2020年、当時、日本体育大学3年生。コロナ禍で初開催されたその年のゴールドジムジャパンカップでオーバーオール優勝を成し遂げると、翌年はJBBF(日本ボディビル・フィットネス連盟)のグランド・チャンピオンシップスで5位入賞。「日本のビキニフィットネスの将来は彼女にかかっている」という声も聞こえてくる、鮮烈なデビューだった。

【フォト】見事な復活劇を演じてみせた柿のステージショット

ところが社会人1年目でパーソナルトレーナーとして活動した2022年は、満足な調整ができなかったと自身が振り返るように、ジュニア・チャンピオンシップスでは出場2人でまさかの2位。以降はステージに立つことはなく、一時は通っていたゴールドジムからも退会していた。

そんな彼女が、「ただ楽しかったデビュー当時を思い出して戦いたいと思った」と、ゴールドジムジャパンカップ2023(12/10開催)に参戦。今大会に出場するうえで大きな力になった一つが、パーソナルトレーナーをやめた転職後の環境の変化だった。

「今までは結果を出してこそ賞賛されるという固定観念で、自分の首を絞めていたんだなと気付かされました。私はこの競技を始めた当初からトップ選手が近くにいる環境で戦ってきたので、その人たちに追い付きたい一心でかなり結果に執着していたのですが、今の職場では『食事制限をしているのにトレーニングもして働いてえらい!』と、過程を褒めてくれます。大会前には、そんな過程を賞賛する言葉が並んだ寄せ書きもいただいたおかげで、かなり良い状態で大会に挑めました」

結果は、ビキニフィットネス35歳未満163cm超級で優勝。審査員7人中6人が1位票を入れており、ブランクを感じさせないステージングだった。

「減量には以前と同様に苦労しましたが、今までと比べるとストレスなく絞ることができました。ステージに立っていた時間はたった数分なので、『もっと立ちたかったなぁ……』という気持ちもありますが、その一瞬のために努力するこの競技を、あらためて美しいと感じました。とても緊張しましたが、楽しかったです!」

復活の過程では、岡野昭仁の楽曲「指針」にも影響を受けたと言う。

「『君が1番だった日も 夢が一つ破れた日も、苦しくとも嫌えなくてそれならそれでいいじゃないか。 切なさと目を合わせたり悔しいをちゃんと考えたり。手のかかった気持ちほど、やがては指針となっていく。引きずりながら歩むんじゃなくて。大事に抱えて歩めたなら』という歌詞に考えさせられ、自分の気持ちと向き合い、再びステージに立つことができました」

今大会においては、「感謝してもしきれないほど、彼の存在は大きかったです。存在自体に助けられていました」と話すパートナーの水沢充裕もボディビル70kg以下級で優勝し、これ以上ない形で2023年を終えることになった。少し回り道をしたものの、すべては途中経過。環境の変化で考え方も変わり、心身ともに復活を果たした彼女は来年、再びあのステージへの復帰を目指す。

「大会に出場していない期間でいい意味で妥協を知り、すべてにおいて『足るを知る』という考え方ができるようになりました。来年はJBBFの大会に出場したいと考えています」

デビュー当時に見せた、彼女らしい最高の笑顔を再び見せてくれるはずだ。

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