ドーピングでつくった体、子どもに見せられますか? 違反して幸せが訪れることはない【ドーピング問題を考える】




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ドーピングをなぜしてはいけないのか……全日本ナチュラルボディビルディング連盟(ANNBBF)理事/国際ドーピング委員会委員長を務める井上大輔氏にここまでアンチドーピングの考えなどを聞いてきた。最後は、“100%ナチュラル”を貫く団体として、未来に向けたメッセージをいただいた。

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ドーピングにより未来が良くなることはない

――あらためて、今後のドーピング問題はどのようになっていくか、お考えを聞かせていただけますか。

「繰り返しにはなりますが、いま禁止薬物を使っている人たちの体に異変が起きるのは10年後や20年後。もしかしたら、亡くなる人が次々に出てくるかもしれません。社会問題になるのは必至ですし、アメリカのように法規制されるのも時間の問題ではないかと思っています」

――著名人にもそういう変化が起きてくると、インパクトは大きいですね。

「いま現在、YouTuberやインフルエンサーの中にも疑わしいと言われている人はいますよね。ですが、筋トレ界隈のインフルエンサーであっても、世間全般の中では実際のところそこまで有名ではないんです。その人たちに『あなたはドーピングしていますか?』と本気で問う人も、今はYouTuberくらいしかいません。ですが、もし彼らがもっとメジャーになり、かつドーピングがより大きな社会問題になると、マスコミがそれを言うようになってくるでしょう。そうなれば、そのインフルエンサーについているスポンサーは離れていくでしょうし、ボディビル業界全般の印象も悪くなっていく。さまざまな場所で“ボディビルダー外し”みたいなことが起きるかもしれません

ANNBBFでは100%ナチュラルで大会運営が行われている(写真提供ANNBBF)

――未来が良くなることはないと。

「そうですね。ドーピングをしてかっこいい体とかきれいな体でいられるのは、本当に若いときだけです。年をとればとるほど、内臓が異変を起こすリスクは高まります。将来、いつまでかっこいい体でいられるかというのを考えると、ナチュラルだと70歳、80歳までそのままでいられます。実際、JBBF(日本ボディビル・フィットネス連盟)の昨年の日本マスターズ選手権では、70歳以上の選手が50人近く出場していました。ですが、ドーピングをしてしまうと40歳くらいでも体を壊してしまう可能性は十分にあります。生きていても健康を害されてしまう。長いこと競技を続けたい、あるいは健康に長く生きていきたいという方は、絶対にやるべきではないとお伝えしたいです」

――そうした現実を、いまボディビルに取り組んでいる人はもちろん、これから取り組もうとしている人、あるいはさらに若い世代は知っておいてもらいたいですね。

「自分の子どもが『大谷翔平選手のようになりたい』と言ったら、もちろん『そうか、がんばれ』と言いますよね。ですが、ドーピングをしてボディビルの大会で頂点に立ったとして、子どもに誇ることができますか? ステロイドユーザーの体を子どもが見て『ああなりたい』と言ったら、絶対に勧めませんよね。そうして体をつくって、自分が本当に100%満足して幸せになるときが訪れることがあるかと考えたら、それは絶対にないとわかりきっていると思います。であれば、最初からやらないほうがいいと思います」

(了)

文/木村雄大