佐久間編集長のパーソナルトレーナー百人斬られ(仮)Vol.38 吉田倭斗(Fulaid)後編




VITUP!編集長・佐久間が全国のパーソナルトレーナーさんを巡っていく「パーソナルトレーナー百人斬られ(仮)」。今回は吉田倭斗トレーナーの後編をお届け。アスリートのパフォーマンスアップについて研究する吉田トレーナーに、デバイスを用いて現状の身体能力のデータを採りつつ、トレーニングメニューを組んでもらいました。

吉田倭斗トレーナーは、アスリートやスポーツパフォーマンスの向上を目的とするトレーニーを中心に指導にあたっています。そのトレーニングは、本来、四半世紀前に現役を引退した私のような普通のおじさんが、トライするようなものではありません。しかし、今回は取材ということで、特別にデバイスを用いて瞬発的な動きや競技に特化した動きを改善していくメニューの一端を紹介してもらいました。

 

まずは現状の身体能力のチェック。ジャンプマットの上で垂直跳びをします。マットに足を着いた姿勢からジャンプして、再着地までの滞空時間から跳んだ高さを算出します。「ポイントは素早く深くしゃがんで、あとは大きく跳び上がることです」と吉田さん。

 

腕を振って反動をつけながら5回連続でジャンプします。おじさんになるとジャンプする機会はほとんどありません。平均は30㎝くらいで「普段ジャンプしていない人としては十分です」と言ってもらいましたが、「跳べないなぁ」という実感でした。

 

次は反動を使わないジャンプです。手を腰に当てて、ヒザを90度くらいまで曲げて、「1・2・3」とカウントしてもらってジャンプします。同じ下半身のパワーを利用する運動ではありますが、反動を使った場合と使わない場合、それぞれの能力を見る狙いです。

こちらは平均26㎝。反動を使ったときよりも数字が落ちていますが、一般的に反動を使ったほうが跳べるので、数字の善し悪しはともかくオーソドックスな特徴と言えます。スキージャンプの選手のように、反動を使わずに跳ぶことに慣れているアスリートの場合、この数値が逆転することもあるそうです。

 

続いてジャンプ3つ目は、足首のバネをみるジャンプ。ヒザはほとんど曲げずにその場ジャンプを8回繰り返します。「意識としてはより短い接地時間でなおかつ高く跳ぶこと」と吉田さん。高く跳べたとしても接地時間が長いと良い数値は出ず、逆に接地時間が短くてもしっかり跳べていなければ、こちらも数値は出ません。

 

8回跳ぶなかでいい感触で跳べているときと、バランスが悪いときが自分でもハッキリわかるほど、ジャンプの質にバラつきがあります。実際のデータにもそれが表れていました。

3回目が突出して高く、全体的にバラつきがあることがわかる

 

「1回ごとのジャンプの質を見てみると、すごくバラつきがあります。これは初めてで慣れていない影響なので、トレーニングで平均化していくようにします」(吉田さん)

 

3種類のジャンプで自身の運動能力の状況を少しチェックしたところで、今度は瞬発系のトレーニングへ。チューブを片腕に通してグルリと体に巻きつけます。後ろに引かれる力+回旋する力がかかっている状態です。これはレスリングのタックルをするときの前への推進力を高めることを目的としたものです。

 

かなり後ろに引かれる感じがあります

 

斜め後ろに引かれるような負荷を受けながら、思い切り踏み込んで前に置いたハードルにタッチします。

 

続いては動きに変化を加えるためマーカーを両足の後ろにセット。ここから、一度、両足をマーカーより後ろに動かしてから前へと踏み込みます。

 

より能力を引き出すために、やり方に変化を加えるわけですが、こうしたトレーニングは対象者の動きのクセや身体的要因によって、どういう環境設定が合うかはバラつきが出ると言います。この両足を後ろに動かしてから前にいく動作は、私の場合、あまり得意な動きではなく、「僕のイメージしたような動きを引き出せていなかったので、そういう場合は違う方法を試します」と吉田さん(今回は取材時間の都合で別メニューはなし)。レスリングでは予備動作をつくらずタックルするため、足を後ろに動かすことがないので、この動きは苦手なのかなと思いました。

 

続いては速筋繊維を鍛えるトレーニングです。ヘックスバーを利用してのスクワットジャンプ。かがんでジャンプという動作を繰り返しますが、スピードが落ちてきたり、ジャンプができなくなってきたりしたら、休憩をとって回復を待ちます。こうしたトレーニングは、最大出力が出ていないと効果的ではないため、数値を見ながらトレーニングをコントロールするとのこと。

もちろん、ケガをしないためにもフォームが大事なので、本来はアスリートのような上級者向けのメニューです。今回はあくまでも取材でトライさせてもらいましたが、スピードとフォームを両立させて、パワーもしっかり出し切るというのは、相当大変だなと感じました。

 

「本来はベーシックなトレーニングによって、基礎的な筋力や動作、関節の可動域を身につけてから、今回紹介したような発展的なトレーニングに入っていきます。どんな競技にも必要な瞬発的な動きや、競技に特化した複雑な動きを改善していくようなトレーニングをします」(吉田さん)

 

デバイスを使用して数値をチェックしながら、いろいろな動作を取り入れていくトレーニングは、まさにアスリート向け。昭和のおじさんが令和の最先端トレーニングを体験させていただき、大変有意義な時間でした。

 

というわけで、今回はここまで。吉田さん、ありがとうございました。

 

 

【トレーナーPROFILE】
吉田倭斗(よしだ・やまと)
2000年生まれ。東京都出身。専門学校在籍時からパーソナルトレーナーとしての活動を開始。2023年に個人事業「Fulaid」を開業。現在は「A SIDE STRENGTH&CONDITIONING」ののパーソナルトレーナー、「Dave Baseball Academy」トレーニングコーチ、保善高校サッカー部S&Cコーチ、B.E.A.T パフォーマンススペシャリストとしても活動する。
〔保有資格〕
日本スポーツ協会公認アスレチックトレーナー/日本トレーディング指導者協会認定トレーニング指導者/AZCAREアドバンスプロバイダー

【パーソナル情報】
Fulaid HP
〔パーソナル料金〕
★初めての方
体験=5,000円
★ゲスト利用
60分=9,000円/回、90分=10,000円/回
★会員(月額利用)
月2回プラン 60分=17,000円/回、90分=19,000円/回
月4回プラン 60分=32,000円/回、90分=36,000円/回
月6回プラン 60分=45,000円/回、90分=51,000円/回
月8回プラン 60分=56,000円/回、90分=64,000円/回
※その他詳細はHPを参照

 

佐久間一彦(さくま・かずひこ)
1975年8月27日、神奈川県出身。学生時代はレスリング選手として活躍し、高校日本代表選出、全日本大学選手権準優勝などの実績を残す。青山学院大学卒業後、ベースボール・マガジン社に入社。2007年~2010年まで「週刊プロレス」の編集長を務める。2010年にライトハウスに入社。スポーツジャーナリストとして数多くのプロスポーツ選手、オリンピアン、パラリンピアンの取材を手がける。