個性を模索し、たどり着いた筋トレ 145cm女子がスターダムの「マッチョゴリさん」になるまで【飯田沙耶(前編)】




女子プロレス団体・スターダムで活躍する飯田沙耶(26)は、「マッチョゴリさん」の愛称で親しまれている人気レスラーだ。

若手選手のためのブランド「NEW BLOOD」でタッグ王者(パートナーは羽南)に君臨する彼女は、とくに会場での人気が高い。マッチョな肉体から放たれる、気迫あふれるファイトが観客の心に訴えるからだろう。決して大柄ではなく、身長145cmと、むしろ小柄。そんな飯田は、闘う女性にあこがれスターダムの門を叩くも、最初は基礎体力の部分からついていくだけで精一杯。デビューしてからもプロレスラーとしてどうアピールしていけばいいのか、模索の日々が続いていた。

写真提供/STARDOM

【フォト】スターダムのマッチョゴリさん・飯田の熱いファイトの数々

「小学4年生から中学3年生まで陸上をやっていましたが、高校では(運動を)とくになにもしてなくて、デビューに向けて必死に食らいついていく感じでしたね。デビューしてからも自分の方向性がわからないままやっていたんですけど、先輩レスラーから『他人より筋肉質だよね。そっちの方向を目指してみれば』と軽くアドバイスされたことをきっかけに、じゃあそういうトレーニングもやってみようかなという感じで始めたんですよ」

とくに大きかったのが、故・木村花さんからのアドバイスだ。これによりパーソナルトレーナーをつけての練習に励むようになった。「ゴリラっぽくしてみたら」との声もあり、“マッチョなゴリラ”をイメージしたキャラクター付けにもつながった。実際、トレーニングを重ねるたびに結果がついてきた。結果が見えてくれば、厳しいトレーニングも楽しくなってくる。普段のプロレス練習に加え、筋トレの時間を楽しむようになったのだ。

写真提供/飯田沙耶

「純粋なチャレンジ精神で始めたんですが、筋トレの楽しさを発見して、かなりハマりました。やっぱり“筋肉は裏切らない”と言いますか、やったぶんだけ体にちゃんと(成果が)出てくる。自分でも変わっていったなと思うし、周囲からもすごい変わったねって言われるのもあって、始めてよかったなって思いますよ」

筋トレの成果により、目指すレスラー像も見えてきた。闘う女性にあこがれたのも、もとはと言えば男子プロレスを通じて女子プロレスを知ったからだ。男子のプロレスでは新日本の石井智宏の闘いぶりが好きだった。

「石井選手も大きい方じゃないですよね。だけど、やられてもやられても、負けずに堪える。むしろ、『こいよ!』って胸を突き出して相手の攻撃を受けるじゃないですか。そこに男気を感じるし、自分が目指すレスラー像もこれじゃないかなって。自分も小柄だし、かといってそんなにスピードがあるわけじゃないですから」

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自分の個性を見出した飯田は、19年1月のデビューから1年11か月で初めてチャンピオンベルトを巻いた。それは、若手のためのシングル王座、フューチャー・オブ・スターダムのベルトだった。団体の象徴でもある林下詩美、現ワールド・オブ・スターダム王者の舞華に次ぐ、第4代王者となったのである。

しかし、21年4月4日、ここからがキャリアの本番というところで、右ヒザ前十字靭帯および外側側副靭帯断裂の重傷を負ってしまう。試合中、得意のジャンピングチョップを放った際に着地に失敗してしまったのだ。これにより、予定されていたトーナメントの欠場はおろか、王座も負けずして返上。復帰にはじつに11か月の時間を要した。当然、日常と化していた筋トレも休止せざるを得ない事態に追い込まれた。

(後編に続く)

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