春を迎え、ジム通いをスタートさせようと考える人は多いと思いますが、初めてのトレーニングに疑問や不安も多いことでしょう。ここではそんな初心者の疑問を解決すべく、多くのトップ競技者の指導実績を誇る大長武史トレーナーに話を聞いていきます。今回は、鍛えるべき筋肉とその優先順位について。
まずは抗重力筋を鍛えて土台をつくる
筋トレにはさまざまなメリットがあります。見た目がカッコよく、美しくなることはもちろん、基礎代謝の向上によりダイエット効果も期待できます。食事に気を配るようになるほか、自信がついて活動量が上がるなど好影響はさまざまです。
中高年にとっては脚の筋肉を鍛えることで、加齢に伴う体の衰えを防ぐこともできます。
では、実際にジムに行って、どこをどう鍛えればいいでしょうか? 私はまず「抗重力筋」から鍛えることをおすすめします。抗重力筋とは「地球の重力に対して姿勢を維持するために働く筋肉」です。
これらは姿勢が悪くなることを防いだり、活動的に動いたりするための土台となる役割をはたします。その土台をしっかりと築き上げてから、胸、背中、太ももなどの大筋群を鍛えていくと効果が出やすいと思います。「たくましい胸板がほしい、グラマラスな下半身がほしい」など、自分の体をデザインしていく前の下ごしらえですね。
背骨の周囲にある脊柱起立筋や広背筋、腹部で言うと腹直筋や腸腰筋、下半身では大臀筋(お尻)、大腿四頭筋やハムストリングス(太もも)、下腿三頭筋(ふくらはぎ)などが挙げられますが、これらを鍛えると私生活から元気が出てきます。抗重力筋は全体的に鍛えることが大切ですが、優先順位を挙げるならば背面の筋肉を鍛えることをおすすめします。
「伸筋」を鍛えることもメンタルに好影響?
背面の抗重力筋とその拮抗筋(反対の動きをする筋肉)をバランスよく鍛えると、円背(ねこ背)が解消されて体が上向きになります。この作用は精神的にもよい影響を与えていくと思います。「うつ病」の病名の起源は「うつむく」だという説もありますが、メンタルが下向きになる時は体も下向きになっている傾向があります。
私はメンタルが弱っている方には、まずデッドリフトや懸垂などで背面から鍛えることを指導しています。実際、そうするとクライアントの気持ちが明るく上向きになっていくことを感じます。
また、筋肉には体を伸ばすための「伸筋」と曲げるための「屈筋」がありますが、現場で指導してきた実感としては、伸筋を鍛える種目を多く行なったほうがメンタル的に好影響があると感じます。
ジムにはいろいろな機材が並んでいますが、まずはバーベルやダンベルなどのフリーウエイトからトレーニングをはじめるのがいいと思います。フリーウエイトはマシンと違い、軌道が固定されない状態で行なうので動作が不安定になりますが、バランスを取りながら動作をする必要があるので、体幹など主目的以外の筋肉も連動して鍛えることができるからです。
ただ、慣れないうちはバーベルを落としたり、途中で上がらなくなってしまうといった危険もあるので、トレーナーや友人などに補助についてもらうといいでしょう。パーソナルトレーナーなどに指導を受けた上で、できれば背面の筋肉全体に刺激が入るデッドリフト系やハイパーエクステンション系を取り入れることをおすすめします。
マシンを使う場合も、ケーブル系で動作軌道の自由度が高いものを選んだほうがいいと思います。
正しいフォームを身につけ、ケガを防ぎ、トレーニング効果を高めるためには、初心者ほどパーソナルトレーニングを受けることをおすすめします。トレーナーに背中を押してもらうことでモチベーションも高まりますし、求める結果にも早く到達できるはずです。そうしてトレーニングに慣れてきたら、自分自身でさらなるレベルアップを目指せばいいのではないでしょうか。
大長武史(だいちょう・たけし)
1968年1月17日生まれ。1993年にスポーツクラブでトレーナーデビュー。1996年にはボディビルMr.サンプレイ新人の部優勝、東京都ボディビル選手権新人戦70kg級準優勝の成績を残す。2000年から本格的にパーソナルトレーナーとして活動を開始。GOLD’S GYM公認パーソナルトレーナー、NSCA CPT パーソナルトレーナー、日本ボディビル連盟公認一級指導員などの資格を取得。2002年より、しんそう療法(治療術)を学びはじめ、智聖流野口整体、仁武会活法療法、BHS療法(手技療法、エネルギー療法、催眠療法)も習得。パーソナルトレーナーと治療術家の二刀流で活躍中。
取材・文/森本雄大