“今どき女子”な覆面レスラー、超高速ファイトの秘訣に迫る「女子プロレスの魅力って無差別級にあると思っている」【スターライト・キッド(後編)】




女子プロレス団体スターダムに所属する、唯一の覆面レスラーであるスターライト・キッド。もともとはスターダムの正規軍STARSのメンバーとして、絶対的なベビーフェースとして懸命なファイトを見せていた。しかし、6・12大田区総合体育館でのSTARS vs大江戸隊全面戦争に敗れたことで、ルールによりキッドは強制的にSTARSを脱退。悪のユニット・大江戸隊に加入させられることとなってしまったのだ。

ヒールへの転向を余儀なくされた彼女だが、その後もリングを縦横無尽に動き回る超高速のファイトスタイルは変わらず。かつての悪役レスラーのイメージを一掃し、唯一無二の個性を光らせている。

【写真】スターライト・キッドの超高速ファイトをつくるトレーニング風景&決めフォト

そんな動きを支えているのが日々のトレーニングだ。じつは練習嫌いだと話す彼女は、自身に制約を課すべくパーソナルトレーニングに通っているという。

「大会の翌日にジムを予約してたんですよ。それがそちらのジムの初日だったんですけど、試合で負けてしまって、テンションがメッチャ下がった状態で行ったと思います。落ち込んだ状態で始めましたね。その日のトレーニング内容ですか? 全然覚えてない(苦笑)」

しかし、キッドはヒールでやっていくことを決意し、パーソナルジムの掛け持ちで力を付けていった。その年の2月にジュリアのワンダー・オブ・スターダム王座に初挑戦しており、このときの闘いでプロレスに対する意識に変化があった。マスクを引き裂かれた屈辱を味わわされ、力のあるレスラーに対抗するためにも「もっと力をつけないと」という思いが大きくなったのだ。ヒール転向から生まれた反骨心も相乗効果となり、ハイスピード王座獲得以降もゴッデス・オブ・スターダム(タッグ)王座、アーティスト・オブ・スターダム(6人タッグ)王座、NEW BLOODタッグ王座とベルトの数を増やしていった。

「欲望の塊」を自称するキッド。一般的イメージは、空中殺法を得意とする覆面レスラーということになるのだろう。そこにキッドのアイデンティティーがあるわけだが、空中技やマスクを意識したトレーニングはあるのだろうか。素朴な疑問だ。

「空中殺法に関しては、とくにないっす(笑)。飛び技に関しては選手それぞれがもともと持ってる素質による部分が多いと思うし、それに加えてジャンプ力とかを鍛える練習はしてますよね。やっぱり体の動かし方を知っていないとできないし、そうでないとそこまでたどり着けない。私もそこは意識してトレーニングしてます。でも、空中技そのものを練習することってないですね。そこはもう実戦でやるしかない。練習中、ひとりでリング上をピョンピョン跳ねることはあるけど、場外にプランチャで飛んでいくことはないですから(笑)」

では、マスクに関してはどうなのか。覆面を被ることで視界は遮られる、呼吸もしづらい。

「確かにそうですよね。でも、そのためのトレーニングって、ないって言えば、ない。ほかのマスクマンはわからないけど、少なくとも私にはないです。マスクで試合をするためのトレーニングってあるのかな? こんどデスぺっち(エル・デスペラード=新日本プロレス)に聞いてみようか。ただ、トレーニングじゃないけど、表情がわかりづらいという部分では、鏡を見て考えますね。表情が伝わるかの意識はしてます」

マスク越しに見える感情さえ意識しているキッド。しかしながら体の小ささはどうしようもない。厚みを持たせることは可能だが、身長が伸びることはないだろう。このハンディをキッド自身はどう考えているのだろう?

「そこは前からもう伸びないだろうと思ってたので、気にはならないですね。デビュー当初より体重は10キロ以上増えているし、力強さも出せるようにはなったので、不利だとも思っていません。むしろ女子プロレスの魅力って無差別級にあると思っているので、デカい選手に小さくても勝てるんだぞっていうのが表現できる。実際、それが証明できてきていると思います。

今は小さい選手も多いので、小さい者は小さい者で、そこをカバーする努力をしているし、闘ったときにはまた違ったものを生み出していると思います。自分としては、今目指してるのがワンダーのベルトなので、ハイスピードのベルトを持っていたときの体格である必要もない。力強さのほうを重視しているので、そのあたりも考えながらトレーニングしていかないといけないですね」

目指すタイトルを意識したうえでのトレーニングをしていきたいと言うキッド。と同時に素顔は今どきの女子でもある。

「食べることと甘いものが大好き。そこはやっぱり女の子だからね(笑)。今日はおいしいものを食べれるからがんばろうというのはありますよね。おいしいものを食べるときは人と共有したいし、友だちとかといるときはやっぱりおいしいものを食べたいじゃないですか。自分だけ食べないとまわりに迷惑もかけちゃうし。でも、ひとりでいるときは低カロリーなものを食べるような意識はしています。リング上で照明が当たったときに『カット出てたね』とか、『大きくなったね』みたいな声があると、トレーニングの成果が伝わったんだなと思うし、うれしいんですよね!」

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