知っているようで知らないタンパク質摂取のキホン 「筋育」のためには、どのくらい摂ればいい?




“筋育栄養士”竹並恵里さんによる集中講座。今回は、筋肉を育てるための食事や必要な栄養について詳しく教えてもらいます。

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【動画】ボディメイク効果増し増しのタンパク質摂取法パーフェクトガイド

筋肉の回復には栄養補給が必須

筋肉づくりには筋トレ、栄養、休息の3つの要素が不可欠です。どんなにトレーニングをがんばっても、栄養や休息が不足していれば筋肉は十分に育ちません。

筋肉を育てるためには、まずは筋トレで筋肉に適切な負荷を与えることが必要です。ただ、その負荷によるダメージから回復するためには、適切な栄養を入れてあげなくてはいけません。筋トレと栄養摂取が組み合わさることで、筋肉は元よりも少しレベルアップした状態まで回復でき、これを繰り返し続けていくことで次第に筋肉が太く強くなっていきます。この現象を「超回復」と呼びます。

栄養が不十分だと、この超回復がうまく起こってくれません。その結果、筋肉量も筋力も増えないどころか、減少してしまうということにもなりかねません。

では、筋育のために必要な栄養素は何でしょうか。これは多くの方がご存知だとは思いますが、まずはタンパク質です。筋肉はそのほとんどがタンパク質でつくられているので、材料のタンパク質をしっかり摂取し続けなければ育ってくれません。

ただ、この「しっかり摂取」というのが、じつは難しい問題。具体的にどのように摂ればいいのでしょうか。

タンパク質はまず「量」をしっかり確保

タンパク質の摂取においては「量」(どのくらい摂るか)、「質」(どんなものを摂るか)「リズム」(いつ摂るか)、「糖質」(との組み合わせ)の4つの因子が重要です。中でも、土台となる一番重要な因子は「量」と考えられます。

厚生労働省が推奨する1日のタンパク質摂取量は、体重1kgあたり約1g。つまり体重50㎏の人であれば、1日約50gのタンパク質量が必要となります。

ただ、これは今ある筋肉を減らさないための最低必要量なので、今よりも筋量を増やして「筋肉を育てたい」という人には当てはまりません。筋育のためのタンパク質必要量は各種学会によって少し基準が変わりますが、体重1kgあたり1.4~1.8g、多いところでは2gという数字が提示されています。

最近の研究で、筋肉の合成レベルは、体重1㎏あたり1.6gくらいのタンパク質摂取量で閾値を迎える可能性が報告されているので(それ以上摂っても合成があまり上がっていかない)、筋肉を育てたい人は、まずはこの量をひとつの目安にするといいと思います。

実際の食事においては、肉・魚・卵・大豆製品を使ったメインディッシュ(主菜)が主要なタンパク質源となっているので、筋育を行なうためには、主菜を抜いた食事は絶対に避けなければいけません。

3食しっかり主菜をとり、その上で、乳製品などでもタンパク質をプラスするのがおすすめです。ちなみに減量をしている時は、摂取カロリーを抑えるために脂質や糖質の摂取量を減らす必要があるため、タンパク質を通常よりも多く摂らないと筋肉を維持することが難しくなります。

アスリートの減量時は、体重1kgあたり2~3gくらいにまで増やしたほうがいいとの報告もあるので、ボディコンテストなどに向けて体重を落とす時期はこの数値が参考になると思います。

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竹並恵里(たけなみ・えり)
管理栄養士、健康運動指導士。専門は多世代に対応した「筋育栄養学」。プロテインでおなじみ「ザバス」の研究開発やオリンピック選手の栄養サポートに従事した後、筋肉から健康を考えるため、東京大学大学院の博士課程で“筋肉博士”こと石井直方氏(東京大学名誉教授)に師事し博士号を取得。現在は東京大学で特任研究員として勤務しつつ、専門学校などでも栄養学の講師を務めている。著書は「筋肉をつくる食事・栄養パーフェクト事典」(ナツメ社)、「進化系!筋肉男子の栄養学」(ベースボール・マガジン社)、「炭水化物の摂り方・選び方パーフェクト事典」(ナツメ社)など多数。

構成/森本雄大
資料提供/竹並恵里