“筋育栄養士”竹並恵里さんによる集中講座。今回は、健全な心身をつくるための「食事の基本」を教えてもらいます。
土台づくりは「バランスのよい食事」
「筋肉を育てるには鶏むね肉とプロテイン」といったイメージを抱いている方は多いでしょう。もちろんタンパク質は重要ですが、それだけではNG。「健全な心身」という土台があってこそ筋育は効率よく進むからです。当たり前のことのようですが、実際にはここを忘れてしまっている方がとても多いように思います。
健全な心身をつくるのは、バランスのよい食事です。そして、食事のバランスを整えるためには、それぞれの栄養素の役割を知ると理解しやすくなります。
栄養素の役割は、①エネルギー源、②体づくりの材料、③コンディショニングと大きく3つに分けられます。
いわゆる「5大栄養素」と呼ばれる体に必須な主要栄養素の主な役割を分類すると、タンパク質は②、ご飯やパンなどから摂れる糖質は①、脂質は①と②、ミネラルは②と③、ビタミンは③となります。第6の栄養素と呼ばれる食物繊維の働きは③です。ただ、注意しなくてはいけない点は、タンパク質は糖質などが不足した時にはエネルギー源として使われるため、①の働きもあるということ。糖質不足の状態は、タンパク質が体づくりに専念できなくなるため、筋育の効率は落ちやすくなります。
このように、それぞれの栄養素にはそれぞれの役割があるため、どの栄養素が欠けても、心身の健全を保つことはできません。「健全な心身」こそが筋育の土台となるため、当然、筋育も思うように進まなくなってしまいます。したがって、これら6つの栄養素をバランスよく摂取できることが食事においては重要で、それが実現できている食事が「バランスのよい食事」となります。
「主食・主菜・副菜」を意識した献立づくりを
だからと言って、毎日栄養素のことを細かく考えながら食事をつくるのは大変です。そこでまずは、「主食・主菜・副菜」という食事の基本の形を覚えることをおすすめします。
図は食事の基本の形を紹介したものです。こちらを見ると、主食の役割は①エネルギー源、主菜は②体づくりの材料、副菜は③コンディショニングとなっていて、3つが揃わないと3つの役割がはたされないことが分かります。どれか1つでも欠けた食事を繰り返していると、はたされない役割ができ、そのバランスの乱れがいずれ不調や病気を招くことになってしまうのです。
したがって、食事は主食・主菜・副菜を毎食揃える、つまり、食事が3つの役割を毎食はたせるようにすることが、食事の基本の形であり、バランスのよい食事となります。でもじつはこれでもまだ足りない部分が出てきてしまうので、果物・乳製品を1日1回を目安にプラスすることが必要です。運動量の多いアスリートの場合は、果物・乳製品まで毎食揃えるといいですね。
主食の役割がエネルギー源となるのは、主食に分類される食品が糖質を多く含んでいるからです。同様に、主菜の食品はタンパク質を多く含んでいるので体づくりの材料となり、副菜の食品はビタミン・ミネラル・食物繊維を多く含んでいるのでコンディショニングが役割となります。
日常生活で一番大切になるのは、主食・主菜・副菜に、それぞれどんな食品が分類されているのかというところ(表のピンク色の部分)。これさえ覚えておけば、献立を考える際、主食・主菜・副菜に該当する食品を揃えることに気をつけるだけで、栄養のバランスが自然と整うようになります。
また、目の前の食事を確認することで、主菜が足りなかったり、主食を摂りすぎてしまっていたりすることに気づけ、自分の食事の問題点も明確になり、改善にも取り組みやすくなるはずです。ですから、まずは上の分類表、とくにピンクに色をつけた部分を頭に入れておいてください。
主食・主菜・副菜が揃った献立とは、いわゆる「定食スタイル」のもの。外食を利用される場合などは、なるべく定食を選ぶようにする。それだけでも栄養バランスはぐっと整いやすくなりますよ。
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竹並恵里(たけなみ・えり)
管理栄養士、健康運動指導士。専門は多世代に対応した「筋育栄養学」。プロテインでおなじみ「ザバス」の研究開発やオリンピック選手の栄養サポートに従事した後、筋肉から健康を考えるため、東京大学大学院の博士課程で“筋肉博士”こと石井直方氏(東京大学名誉教授)に師事し博士号を取得。現在は東京大学で特任研究員として勤務しつつ、専門学校などでも栄養学の講師を務めている。著書は「筋肉をつくる食事・栄養パーフェクト事典」(ナツメ社)、「進化系!筋肉男子の栄養学」(ベースボール・マガジン社)、「炭水化物の摂り方・選び方パーフェクト事典」(ナツメ社)など多数。
構成/森本雄大
資料提供/竹並恵里