欠食は「筋育」に致命的 とくに朝食の欠食は、筋肉の分解を進めるおそろしい結果に




“筋育栄養士”竹並恵里さんによる集中講座。今回のテーマは筋育において大きなマイナスとなる“欠食”について。

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筋量を増やすには、筋肉の合成量が分解量を上回る必要がある

筋育栄養学で、絶対にやってほしくないとお伝えしていることは「欠食」です。

筋肉の細胞は、つねに合成と分解を繰り返しています。食事で栄養が入ってくると合成優位な状態となりますが、空腹になると分解のほうが優位になってしまいます。つまり、空腹は筋育にとって不利な状況ということです。

一般的には1日3回食事を摂って3回合成のスイッチを入れることで、1日の合成量と分解量が釣り合って筋肉量が維持されると考えられています。

では、これが1日2食になるとどうなるか。合成スイッチが2回しか入らないうえ、分解時間も長くなるので、分解量が合成量を上回って筋肉が減りやすい環境になってしまいます。ですから、筋育において欠食は言語道断と言ってもいいでしょう。

欠食の中でも、現代人に多く見られる朝食の欠食はとくに危険です。朝食を欠食すると、睡眠時間を挟むのでかなりの長い時間、空腹にさらされることになるためです。その間に筋肉の分解が進んでしまうかと思うと、おそろしいですよね。

また、欠食をしてしまうと、そもそも1日に必要なタンパク質量の確保が難しくなります。筋育に必要とされる1日のタンパク質摂取量は体重1kgあたり1.6gを目安に、とお伝えしていますが、2食でこの量を確保するのは容易ではありません。

中には「私は1食でドーンと食べられるから大丈夫」という強者もいるかもしれません。しかし、前回説明したように、1回のタンパク質摂取量と筋肉の合成反応の関係には閾値のようなものが存在するため、閾値を大幅に超える量をまとめて摂取してもその一部は筋肉の合成に使われていない可能性が高く、もったいない食べ方になってしまいます。

欠食せず1日3回食事をすることは筋育において最低限のルール。これでようやく筋量の「維持」ができるわけですから、現状よりももっと筋量を「増やす」ためには、3食にさらに間食をプラスして合成スイッチの回数を増やすことが有効な栄養戦略となります。この場合、間食も含めて食事の摂取間隔は3~4時間を目安にするといいでしょう。

繰り返しになりますが、筋育のためには欠食は絶対に避けるべき。とくに朝食の欠食はリスクがとても大きいと覚えておいてください。

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竹並恵里(たけなみ・えり)
管理栄養士、健康運動指導士。専門は多世代に対応した「筋育栄養学」。プロテインでおなじみ「ザバス」の研究開発やオリンピック選手の栄養サポートに従事した後、筋肉から健康を考えるため、東京大学大学院の博士課程で“筋肉博士”こと石井直方氏(東京大学名誉教授)に師事し博士号を取得。現在は東京大学で特任研究員として勤務しつつ、専門学校などでも栄養学の講師を務めている。著書は「筋肉をつくる食事・栄養パーフェクト事典」(ナツメ社)、「進化系!筋肉男子の栄養学」(ベースボール・マガジン社)、「炭水化物の摂り方・選び方パーフェクト事典」(ナツメ社)など多数。

構成/森本雄大
資料提供/竹並恵里