東京女子プロレスの“ムキムキピンク”渡辺未詩 アイドル兼任プロレスラーは団体屈指の力持ち!【渡辺未詩(前編)】




東京女子プロレスのプリンセス・オブ・プリンセス王者・渡辺未詩は、プロレスとアイドルの二刀流をこなしている。プロレスのトレーニングをしていくうえでほかの選手以上に力があることに気づき、今では団体屈指のパワーファイターとなった。

2人を一度にぶん回すジャイアントスイングがパワーファイトの代表格。『か弱い女の子』にあこがれていたはずが『力持ち』になった彼女のトレーニングへのこだわりとは?

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力持ちに気づいたのは、アイドルオーディションからプロレスラーになったのがそもそものきっかけだった。アップアップガールズ(仮)の姉妹グループであるアップアップガールズ(プロレス)というプロジェクトが始動し、アイドルグループにあこがれていた渡辺は数あるオーディションのひとつとして応募した。それに合格し、プロレスとの兼任が始まったのである。

しかしながら当時はプロレスをまったく知らず、ただアイドルになりたい一心で応募した。合格したはいいものの、アイドルだけではなくリングで試合もしなければならないとは…。しかも当然、どちらも“初心者”。アイドル活動の経験があるわけでもなく、プロレスもそこで初めて知ったくらいだ。

「両方ということで心配や厳しい声もありました。ただ、だからこそどちらの技術もしっかりつけないといけないなって、ある意味そこがバネにもなりましたね」

とはいえ、現実的に一度に2つをこなすとなると相当の労力が求められる。アイドルとプロレス、双方の指導者からの声が食い違う場合もあるかもしれない。本人たちが混乱することもあるのではないか。

「そうですね。ただ、これまでいろんなアイドルを育ててきたアイドル事務所の社長が、同時にプロレス大好きなんですね。根本がプロレス大好き少年(笑)。プロレスは技術がないとリングに立てない。そこをしっかり理解していた方なので、私たちもそこを意識してやるようにしました」

では、アイドルとプロレスの両立のため、具体的にどのようなトレーニングを行なったのだろうか。

「まずはオーディションの時点からボイストレーニングやダンスレッスン、振り付けが始まりました。しかも普通のアイドルではなくプロレスラーとの兼任だったので、ただかわいいだけでなく、力強く踊る、運動量の多いダンスが求められました。でも最初はどのメンバーも体力がなさすぎて、歌うにしてもダンスをするにしても、プロレスの練習にしても、すべてにおいて体力がなかったですね。それでも最初は『アッパーキック!』一曲だったので、これを全力でやり切るというのがミッションでした」

体力をつけるトレーニングが両方に活きた。レッスン、トレーニングを続けていくうちに、渡辺は今まで気づかなかった長所に気づく。いつの間にか他人よりも重いウエイト器具を持ちあげていたのである。

「『この重さ持てる?』とか『これ担げる?』と言われて、やってみると実際にできたり。私は“か弱い”が女の子のかわいさだと思っていたので、最初は嫌々持ってたところもあったんですけどね」

プロレスラーとしてデビュー後は、そのパワーが大きな武器になった。そこからさらに力をつける練習を取り入れるようになり、ひとりで2人をぶん回すジャイアントスイングを編み出した。ただ力があるだけでできる技ではないと、渡辺は言う。

「ひとりを回すだけじゃちょっと物足りなくなって、2人いけるかもと思ったのが最初です。でもやっぱり、いざまとめて持とうとするといろいろ難しい点が多くて、かなり試行錯誤しました。脚の持ち方とか遠心力をかけるまでの持っていき方とか、だいぶ難しい部分がありましたね。そこで必要だったのが、背中の力でした。広背筋、腰、背中の力がないと、あれはできないですね。パワーファイターといっても力があるだけではダメ。そこには技術も必要だということなんです」

アップアップガールズ(プロレス)は2017年8月にステージデビュー、翌18年1月4日の後楽園ホールでプロレスデビューをはたした。以来、渡辺はアイドル活動とプロレスを両立させていく。新人の頃には先輩レスラーに早く追いつきたいとの思いから、ほかの選手よりも長い時間道場で練習した。メンバー全体が集まるプロレス練習は週2回。それはもちろん、時間の許す限り毎日のように道場に通い、トレーニングに明け暮れたのだ。やがて東京女子の主力選手となり、今年3月の両国国技館では絶対王者・山下実優を破り、頂点のプリンセス・オブ・プリンセス王座に到達。東京女子のトップに立ったと言っていい。そんな彼女を支えるのが日々のトレーニングだ。

(後編に続く)

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