PROWRESTLING ZERO1に所属する田中将斗は、現在51歳にしてハードな闘いを見せる不屈のレスラーだ。彼はグッドコンディションをつねにキープし、ゴツゴツしたファイトでどんなスタイルにも対応、ハードコアマッチでも相変わらずの強さを誇る。
【フォト】51歳にして衰え知らずの肉体 “弾丸戦士”田中将斗のトレーニング
では、凶器が飛び交うハードコアマッチに備えてのトレーニングはあるのだろうか。田中から仕掛ける凶器攻撃はもちろん、テーブルやイスで脳天をぶち抜かれるのも日常茶飯事だ。そんな攻撃に耐えるために、何か準備していることはあるのだろうか。プロレスファンの素朴な疑問だ。
「もちろん受け身は大事で、それはデビューするまでにみんな叩き込まれると思うんですね。ただ、ハードコアに特化したトレーニングってとくにないと思うんですよ。これに関しては、ただただ丈夫に産んでくれた親に感謝するしかないです。ボク以外でも、ハードコア、デスマッチに特化した練習をする人ってとくにいないとは思いますね。頭をぶち抜かれる練習とかしてたら、逆に体が(試合前から)ぶっ壊れます(笑)」
とはいえ、必殺技を本当の必殺技に昇華させるためのトレーニングはあるだろう。“弾丸戦士”の異名をとる田中の場合、ダッシュでスライディングし強烈なエルボーを叩き込むスライディングDがフィニッシュを取りにいく大技だ。これ一発で相手からピンフォールを奪い、かつ、見ている側にもカタルシスを与える。これを決めるにも、日頃の鍛錬が必要なのだ。
「エルボーを打つのを意識してトレーニングするとかはとくにないですけど、エルボーとスライディングを合わせたスライディングDにはスピードが必要になってくるので、スピードを落とさないことと体重の乗せ方が大事になってきます。そのためにも、ランニングの有酸素運動を意識してやっていますね。たとえば、スタミナをよりつけるためにランニングマシンの傾斜をきつめにして走ります。それで思いっきり走るんです。ランニングは外ではなく、マシンを使うように。というのも、マシンだとスピードを一定にできるし、外だと必ずしも一定の速度では走れない。しかもマシンだと外で走るよりヒザに負担がかからないんですよ。実際の試合では時間が経つにつれてスタミナが落ちてくる選手もいるけど、ボクの場合はスタミナを落とさずに最後トップスピードでスライディングDを出せるようにしないといけない。スピード感を出すためにもスタミナが大事なんですよね。たとえ必殺技を出せるチャンスがあったとしても、自分がばてていたらスピードは出せないから相手にかわされるかもしれないし、威力も落ちる。体重も乗っていないと、ピンフォールも取れなくなってしまうんですよね」
実際の試合を見れば、スライディングⅮの高い精度が伝わるだろう。スピード、威力がまったく落ちないのも、コンディションを高い位置でキープしているからこそだ。フィニッシュを意識してランニングするという田中だが、普段のトレーニングではどんなことを考えながら筋トレマシンと向き合っているのだろうか。
「ボクの場合、『田中は年齢重ねても変わらないな』『アイツはいつもコンディションいいな』と言われるのがモチベーションになっているんですよね。そう思われているんだったら、ボクはそういう状態でリングに上がらないといけない。そういう意識がすごく強いです。そういうふうにしようというトレーニングをしていますし、そこを意識してのトレーニングなんですよね。ただ、マシンと向き合っているときというのは、たぶん、カッコいい体になりたいとの気持ちでやっているんだと思います。筋肉の張りを鏡で見るんですよ。そのたびに、カッコよくなってきたなとか、今日はお肉がちょっと乗ってるなとか、そんなことを考えてますね。それがかえっていいトレーニングにつながっているのかなとも思います」
カッコよくなりたい、つねにカッコいい自分でありたい。それはトレーニングに励む男性共通の思いだろう。それを実践し続けているのがプロレスラー・田中将斗であり、肉体美も追求する田中にとって、もう一つ忘れてはならないのが、“日焼け”である。
「ボクにとっては日焼けもトレーニングの一部なんですよ。筋トレ、ランニング、日焼けでセットになってます。日焼けもリングに上がるうえで欠かせないもの。ただ、『黒い』っていつから言われるようになったのか、まったくわからないんですよ(苦笑)。FMWの頃から日焼けサロンには通ってましたけど、いつからなんだろう? でも、そう言われるようになってからボクは黒く日焼けしてなくちゃいけないんだと意識するようになって。これってつねにコンディションをよくしておこうという意識ともセットなんですよね。リングに上がって体をきれいに見せるうえでも、日焼けしていたほうが見栄えもするし、スポットライトが当たったときに黒い方がカットがきれいに出やすいと思うんです」
日焼けがコスチュームの一部となって久しい田中。彼らしさがまったくブレることなく迎える7月11日の30周年記念大会。ここまで変わらずに第一線でやってこられた秘訣はどこにあるのか?
「プロレスに集中できる環境にいられたというのが一番じゃないですかね。ボクにはプロレスしかないというか、これで飯を食っていくんだという意識が高かった。FMWにしてもフリーの期間にしても、そして橋本真也さんがいたZERO1でやってきてからも。確かに苦しいときもありましたけど、プロレスで生活し、トレーニングに時間を費やせたのが大きかったと思います」
7月11日、新宿での記念試合でも、いつもと変わらぬグッドコンディションの田中が見られるはず。この大会では、2014年に最優秀タッグを受賞したときのパートナーであるNOAH杉浦貴との一騎打ち。肉体を削るような激闘は必至である。また、7月21日にはDDTプロレスのビッグマッチで両国国技館に参戦。KONOSUKE TAKESHITA(竹下幸之介)とシングルで対戦することが決まっている。竹下はDDTとアメリカAEWを主戦場としており、かつてECW世界ヘビー級王座を保持していた田中との対戦は、世界で闘うレスラーという意味でも大注目だ。
デビューからまもなく31年。田中はこれからも、フルスロットルの弾丸戦士で闘っていく。