目指すは「地球で一番強くて美しい女」プロレスを通じてコンプレックスが長所に【ZONES(前編)】




女子プロレス団体Evolution(エボリューション=エボ女)に所属するZONES(ゾネス)は、筋トレを趣味にしてからつけられたニックネームをそのままリングネームに使っている。その名の通りアマゾネスを連想させる野性味あふれるルックスで、存在感は抜群だ。

【フォト】美マッスルボディを誇るZONESのトレーニング

プロレスを知ったのも筋トレつながり。女性ボディービルダーのケイラ・ロッシに刺激を受け、調べていくうちにプロレスのリングに上がった時の映像を発見。彼女の闘う姿から、直感的に「これだ!」と感じたと言うのだ。

それまではスリムで踊れるカッコいい女性に憧れ、一般企業で働きながらボクシングやムエタイの練習を積んできた。痩せたい一心でダイエットやエステにも励んだが、もともと筋肉質で、それがコンプレックスにもなっていたと言う。

しかし、ケイラ・ロッシのライフスタイルをなぞっていくうちに「その人にはその人に合ったカッコよさがあるはず。そっちを求めるほうが絶対にいい」と判断。無理に痩せてスリムな体型を目指すのではなく、筋肉質をさらに活かすトレーニングへの方向転換を図った。

パーソナルトレーナーをつけて結果が出始めると、コンテストに出場してみたいと意欲も沸いた。実際、数種のコンペティションに臨み、JBBF(日本ボディビル・フィットネス連盟)のビキニフィットネスに出場。大会では準優勝を飾るなど経験を積んだ。そんな中で見つけのが、尊敬するボディービルダーのプロレスデビューだった。

「私って、昔から良くも悪くも目立つタイプなんですよね。目立ちたくないから縮こまっていても、目立ってしまう。学生時代には先生からなにかと目をつけられるし、目立つだけで部活の部長とかやらされたりもしていました。存在感があるって言われるし、目立ってしまうことがコンプレックスでもあったんです。ですけど、同じ目立つなら人前に出る仕事をすればいいんじゃないかと、ケイラ・ロッシ選手のプロレスを見て閃きました。こうやって鍛えた体を見てもらう手段があるんだって。その時までプロレスはまったく知らなかったんですけど、その後、エボ女の新人募集の告知をたまたま見つけて応募したんです」

エボ女は、全日本プロレスの諏訪魔、石川修司(フリー)が新人を育成する新団体。男子プロレスラーが指導するという、これまでとは一線を画した団体だ。しかも旗揚げ前とあってまったくの未知数。とはいえ、ZONESはプロレスの知識がないからこそ、不安を感じることもなく挑戦。諏訪魔と石川の実績は応募してから調べてみた。「こんなにすごい人から教われるんだから、ここにしよう」。そして、エボ女の練習生として、プロレスラーデビューを目指すことになったのである。

プロレスでは、受け身が基本中の基本となる。相手の技を受けた時、受け身をうまく取れなければケガに直結する。相手が受け身を取れて初めて、レスラーは技を仕掛けることができる。ボディビルの練習はプロレスのための体作りにも役立ったが、受け身はまったくの初体験だった。「いつになったらデビューできるんだろう?」と不安になるくらい、延々と受け身を繰り返す毎日だった。

そして迎えた2023年3月31日、ZONESは、Chi Chi(チーチー)、SUNNY(サニー、23年12月引退、現レフェリー)とともに旗揚げ戦でデビューを飾った。エボ女興行では他団体の大物選手とのシングルが続き、他団体へ参戦する機会も多くなっていった。旗揚げから約1年弱でZONES、ChiChiとも通算100試合を突破。2人揃って女子プロレス界の売れっ子と言っていいだろう。

他団体との交流の中で、ちゃんよた(P.P.P.TOKYO)との出会いは大きな刺激となった。というのも、元警察官やセクシー女優という異色の経歴を持つちゃんよたは、「筋トレ女子YouTuber」としても活動。鍛え抜かれた肉体をプロレスで表現することは、ZONESの描くプロレスラーの理想像。いいお手本にもなっているのだ。

ちゃんよたとのマッスルシスターズ

2人は、昨年12・17新木場でのエボ女興行でシングルマッチを行ない初遭遇。この時、ZONESはいつもとは違う親近感を対戦相手に覚えていた。

「普段は握手とかしないんですけど、この時は試合後にガッチリとハグしていました。なんとなくいいなあ、合うなあと思ったんですよね。この後、P.P.Pさんの大会に呼んでいただいて、ちゃんよた選手と“マッスルシスターズ”というタッグチームを結成しました。試合だけではなく、ちゃんよた選手のSNSからも大きな刺激を受けています。今日もちゃんよたは筋トレしたんだなぁとか、最近だいぶ絞れてきてるなぁとか、見るたびに刺激をもらっていますね。それを励みに私もジムに行こうとか、今日もがんばろうとか思えるんですよ」

ちゃんよた&ZONESのマッスルシスターズは、P.P.Pのリングで3回実現(タッグマッチ2試合&6人タッグマッチ1回)。今後も組まれれば、タッグでありながらお互いが鍛え抜いた筋肉を競い合うような、ユニークなタッグチームになっていくのではなかろうか。

(後編に続く)

【次のページ】ZONESのトレーニングフォト