22歳、日体大のエース・石山檀として最終楽章「競技歴、筋量、才能…全ての言い訳を捨てて次は伊吹主税を倒す」




その男がステージに現れると、低いうなり声を含んだような雰囲気が会場を包み込む。熱気溢れる大声援とはまた異なる、深く、納得感のある声――。石山檀、22歳。ボディビルの名門・日本体育大学で心と身体を実直に磨いてきた男が、ついに最終学年を迎えている。

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8月25日に開催された、JBBF(日本ボディビル・フィットネス連盟)主催の23歳以下(ジュニア)のメンズフィジーク日本一決定戦において、石山は172cm超級で昨年に続き優勝。さらに172cm以下級勝者とのオーバーオール戦も制し、2024年のジュニア世代No.1フィジーカーの座を手に入れた。昨年はオーバーオール優勝は逃していたため悲願の戴冠ではあるが、「率直な気持ちとしては、あまり喜びとか、感情的なものは少なくて」と話す。その理由は、すでにその先を見据えているからだ。

「今年は、10月のグランドチャンピオンシップス(※)にピークを持ってこよう新しい減量や調整方法を試していて、その過程で、一度身体を見ておきたいと思って今回のジュニア選手権に挑戦させていただきました。『勝ちきる』という目標で臨んでいたので、まずはそれをやり遂げられたという安心感があります」
※フィットネス・ジャパン・グランドチャンピオンシップス:階級無差別のフィットネス競技の日本一決定戦

現在4年生で在学中ではあるが、昨年に全日本学生選手権を優勝した際にも「来年はJBBFの一般部に挑む」と学生大会からの一足早い卒業を宣言しており、まずはその布石の一勝となった今大会。金メダルの獲得により無事にグランドチャンピオンシップスへの出場権を得たが、そこでの目標は明確。2連覇中の王者・伊吹主税に挑むことだ。この日、トップ選手であると同時に審査員資格を持つ伊吹は、審査員席から石山を見定めていた。当然、その姿は石山の目に入っていた。

「ステージ上で何度も目が合いましたね…(笑)。去年、伊吹さんがグランドチャンピオンシップで優勝した後に僕が舞台裏へ行って、『来年はぶっ倒すんで!』と宣言したのが最初の関わりです。そこから、パーソナルに通ったりしてプライベートでも関わらせていただいています。

今日、階級優勝後の表彰式でのインタビューで『まだ1人倒す人がいる』とお話しました。あのタイミングなので、その1人というのはオーバーオール戦の相手という捉え方もできるけど、僕の中では『目の前にいる伊吹主税を倒す』っていう意味でした」

当然、日本王者と22歳の学生では実績も経験値も大きく異なるのは本人も承知。それでも最終的に目指す場所として、その熱量を抑えることはない。

「トレーニング歴、筋量、才能、年齢…そういう差がある中でも、言い訳を全部捨てて、バチバチの真っ向勝負を見せたい。1年間かけてグランドチャンピオンシップスのために自分は何をやってきたのか、それを証明したいと思います」

石山にとっては、日体大生としてラストステージになるだろう。10月6日、4年間の集大成を大阪の舞台で見せる。

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