さまざまな競技において、“マスターズ”というカテゴリーが存在する。それぞれ対象年代は異なるが、大雑把に言ってしまうと、いわゆる無差別のトップレベルとはひと区切り置いたカテゴリーと認識されることも多い。ただ、女子フィジークという競技において、その認識は当てはまらない。
■完成度の高いポージングでマスターズ女王に輝いた阪森のステージフォト&ムービー
9月15日に福岡・ウェルとばた(北九州市立福祉会館)にて開催されたJBBF(日本ボディビル・フィットネス連盟)主催の「第36回日本マスターズボディビル選手権大会」の女子フィジークカテゴリーにて、50歳以上級及びオーバーオール優勝を達成したのは2児の母親である阪森香理(54歳)だ。
今大会は、40歳以上級、50歳以上級、60歳以上級の3階級に分けて競技を実施。その数字だけ見ると、いわゆる“ベテラン”の大会に見えるが、女子フィジークにおける最高峰の舞台・日本選手権優勝の荻島順子が現在56歳、準優勝の澤田めぐみが64歳と、そもそもトップレベルの年齢層が高い競技である。それゆえに、このマスターズ選手権の意味合いも他競技とはやや異なると言えるかもしれない。
阪森は昨年の日本選手権5位だが、この日、40歳以上級を制した新沼隆代は今年8月のジャパンオープン選手権優勝、そして60歳以上級優勝の清水恵理子は昨年の日本3位。そんな彼女たちの戦いはマスターズの大会と言えど日本トップレベルの争いであり、2人を制しての優勝に阪森も「信じられない、その一言です」と声を漏らす。
「今年も、まずはちゃんと仕上げて出場するというのと筋量をアップさせる、その目標を達成するためにコツコツとトレーニングをしてきました。中でも、上半身、特に肩や下背のほうは意識してやってきました」
1週間前に出場した日本クラス別選手権(163cm以下級で2位)の際にも、上半身の大きさは確かに際立っており、審査表を見ても優勝を争った澤田との差はわずかなもの。本人は「清水さんを超えたとは思ってないですが…」とは言うものの、この日は結果として日本3位に勝利しており、その壁の高さはすでにわずかというところまできているのは間違いない。
2022年は3位だった阪森にとって、10月に大阪で開催される日本選手権は再び表彰台を狙うステージとなる。
「先輩たちがいるから頑張れるというのもありますし、いつか追いついて…というのがモチベーションになっています。今日の時点で私もまだまだ完璧に仕上げてはいないので、残り1ヶ月弱で完璧に仕上げて、その先の世界も見据えながらステージに立ちたいと思います」