学生ボディビル、通称“学ボ”には、他のボディビル大会とは一線を画す楽しみが多くある。体の一部位のみを強調したポーズで競う部分賞審査、いわゆる「ファーストコール」(その時点での上位選手のみによる比較審査)が実質的に存在せず、審査員の納得がいくまで繰り返される比較審査、そして個性あふれるフリーポーズもその一つだ。
「学生の大会でなければできないフリーポーズをやろうと思い、去年の全日本学生から『インターネット・エンジェル』というキャラづくりというか(笑)。今回もエンジェル要素を入れたいなと思って、フリーポーズをとらせていただきました」
そう話すのは、9月22日に開催された「第64回関東学生ボディビル選手権」で優勝した日本体育大学4年生の大島達也だ。90秒間という、ここに辿り着いた選手のみに与えられる自由な時間をフルに使い、「ダダダダ天使」(ナナヲアカリ)のリズムに乗って天使のポーズを決め、途中にはほぼ踊って舞う。ただ、決してふざけているわけではない。途中にはしっかりと規定ポーズも挟み込み、最後は得意のマスキュラーポーズ連発で締める。途中の要素のボディビル的な評価はさておき、「学ボだなぁ」と思わせる90秒を魅せた。
もっとも、ただ楽しくやればいいというわけではない。金メダルが与えられた結果が示すように、たゆまぬ努力でつくり上げてきたボディがあってこそ、そのエンタメ性はより輝くものだ。
「去年の関東学生では4位で、上半身のバスキュラリティーは評価してもらえましたが、下半身の筋肉のサイズはありつつもカットをなかなか出せませんでした。そこを今年はしっかりと出せるように、トレーニングはもちろんポージング練習に重きを置いてやっていたので、その成果が出せたのかなと思います」
総合優勝のみならず、大腿四頭筋のカットをしっかりと見せたことにより、部分賞の脚部門も獲得。一方で、昨年は「自分の武器は血管が浮き出るところ」と話していたように、得意のモストマスキュラー部門では昨年に続く受賞はならず。「悔しいです」と苦笑いしつつも、「レベルが上がってきて、選手それぞれの良さが出てくる大会になったんだなと感じました」と話す。
今週末には、東京・福生市にて学生No.1を決める「全日本学生ボディビル選手権」が再び東京都福生市で行なわれる。今年の関西学生王者の本多虎之介(大阪学院大学4年)ら、他地方の選手たちとの大激戦は必至だ。
「この大会に向かう過程で、体調を崩してしまったり、気持ちの問題で出場できなかったりした部員が多くいます。それでも応援には来てくれた後輩や同級生もいっぱいいる中で、今日はこうして結果で恩返しできたことがまずはうれしいです。1週間で体を大きく変えることはできないですが、大会当日の調整の部分で今日は反省すべき点がありました、予選から決勝に向かうところでコンディションを上げていけるように、全日本学生では流れをつくっていきたいと思います」
4年生の大島にとって次がおそらく学生ラストステージ。筋肉の舞台に再び天使降臨なるか。