鍛えあげた下半身から繰り出される必殺技・ストームゼロを代名詞に、外国人トップレスラーへと上り詰めたのがトニー・ストームだ。13歳でプロレスデビューし、英国を中心に欧州での戦いを経て2016年にスターダムに参戦。10月5日(土)には名古屋ドルフィンズアリーナ大会でIWGP女子選手権に挑む。
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彼女の場合、プロレスラーでありながらも、大きなお尻がコンプレックスになっていたという。しかしこれは、鍛えあげればプロレスに活かせるものでもあった。そこに気づいたのは、ギロチンドロップを使うようになってから。かつてブル中野も得意としていたギロチンドロップ。アジャコングとの激闘を通じ、ブルも下半身の大きさと強さによって、この技を必殺技へと高めていったはずである。
トニーが初めてギロチンを繰り出したのが、2016年7・24大阪、紫雷イオ(現イヨ・スカイ=WWE)を破り第2代SWA世界王者となった試合である。このときのフィニッシュがまさにトップロープからのダイビングギロチンドロップ(その前に出したのがパイルドライバー)だった。本人の想像以上の破壊力で、5月のスペインで行なわれた同王座決定トーナメント決勝戦の雪辱もはたしてみせた。日本での初戴冠を機に、トニーは下半身を活かせるギロチンドロップをフィニッシュとして使うようになっていったのである。
だからこそ、下半身のさらなる強化を心掛けるようになった。すると以前から使っていたパイルドライバーにも自信がついてきた。両太股で相手の首を挟み、ガッチリと固定。そこからジャンプして脳天からマットに叩きつける。下半身の強さにスピードを加え、相手に切り返すチャンスを与えない。この高速垂直落下式パイルドライバーがストロングゼロ、現在のストームゼロだ。
「日本のプロレスはハードヒットなスタイルなので、これに対応できる技がほしかったんです。そこで考えたのが、ダイビングギロチンでした。ギロチンは下半身の強さを活かせるよう練習した技です。最初はお尻が大きいのがコンプレックスだったけど、プロレスなら長所にもなりえますよね。だから、トレーニングでも下半身を意識します。ヒップアタックもギロチンも、そしてパイルドライバーもコンプレックスを長所に転換した技なんです」(トニー)
ストームゼロは名称を変えながらスターダムからWWE、AEWでトニーの代名詞的ムーブになっている。約5年3カ月ぶりの来日となった9・28後楽園では、タッグマッチで白川未奈(6月30日にトニーの王座に挑戦)と組み、岩谷と前哨戦。この試合では、岩谷のパートナーAZM(アズミ)をストームゼロで仕留めてみせた。以前と変わらない技ながらも、トニーの下半身はかつての来日時以上に大きくなっており、パワーアップは明らかだった。さらにハリウッド黄金時代のスター女優をイメージしたキャラクター、「タイムレス」で新しい姿を見せつけ、岩谷を困惑させた。タイトル戦では、岩谷がこの二面性でトニーの術中にハマる可能性があるのではないか。
6年半ぶりに肌を合わせた岩谷は、トニーの印象を「メチャクチャ力強い、パワーがすごい。そして、独特な間合いというか、こっちまで飲み込まれそうになっちゃいそうな雰囲気がありますね」と語る。
女子レスラーにしては珍しく、クラシックな英国スタイルを現地で学び、レジェンドレスラーのテクニック、インサイドワークに刺激を受けた。これを基盤として日本で下半身の強さに気づき必殺技を習得。ワールドクラスのレスラーへと成長を遂げた。その延長上に、現在の“タイムレス”トニー・ストームがいる。10・5名古屋でIWGPのベルトを腰に巻くのは、アイコンか、それともタイムレスか!?
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