「楽しんでいる姿を皆さんに見てもらいたい」不安や心配を抱えたとき、フィジーク女王 ・荻島順子が立ち返る場所




10月6日に開催された「第42回JBBF日本女子フィジーク選手権」において優勝、見事連覇を達成した荻島順子。1か月の前哨戦・日本クラス別選手権でも優勝しており、そのステージを見て「すでに非の打ちどころがない」と感じたものだが、自分の見る目のなさを痛感させられた。

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当時のことを聞いてみた。

「身体的にも、納得いかない仕上がりでした。規定ポーズもきちんととれていなかったですし、フリーポーズも未完成のまま。日本クラス別のときは全てが私の中で納得いかなかったので、この1か月で修正したんですけど…」

と、ここまで話したところで、一瞬彼女の口が止まった。おそらく、本質的なところは『そこじゃない』と我に返ったのかもしれない。こう続ける。

「とにかく自分が楽しくこの舞台に立てるように、ということだけを考えてやってきました。私が楽しんでいる姿を皆さんに見てもらおう、そういう気持ちでステージに立っていました」

昨年は、東京選手権、日本クラス別、日本選手権とそれぞれ優勝後に彼女に話を聞き、今年もこれで2度目。年末には、歩みを振り返る個別インタビューも実施しているが、まだまだ彼女のことを理解しきれていなかったようだ。ストイックに体づくりに励むその根底にあるのは、女子フィジーク選手として高みを追求することよりも、それを通じて「楽しむ」ということなのだ。

「そうですね。もうずっと、自分が勝つということよりも、私が楽しそうにやっているところをステージを通して伝えれば、フィジークって楽しそう、やってみようって思う人が増えるかなって思ってきました。もちろん、とはいえ順位がつく大会なので、やっぱりギリギリになると得体の知れないものに襲われるというか、自分を見失うこともありました。でもそういうときにこそ、『自分はなぜ女子フィジークをやっているんだろう』ということを思い出すようにしました。それが、結果につながっただけなのかなと思います」

振り返ると、確かに荻島はいつも笑顔で、「なんか楽しそう」という雰囲気をまとってきた。バックステージでも、客席で会ったときにも、もちろんステージ上でも。不安や心配があれば、立ち返る場所ができる。それが彼女の女王としての強さなのだろう。

「女子フィジークはハードルが高いとか、将来はやってみたいけど、まだまだ自分にとっては先の話っていう人は多いと思います。でも、そんなことはないと思います。今の自分の納得いく体をつくって、自分のやりたいようにやってみればいい競技だと思うので、ぜひやってみてください。楽しいと思いますし、自分を表現できる最高の場だと思います。一歩足を踏み入れてみてください」

この言葉がより多くの女性トレーニーに伝わり、ますます競技として盛り上がっていくことを願うばかりである。

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