ボディビル界に訪れている世代交代の波。その中心人物は紛れもなく刈川啓志郎(学習院大学4年)だろう。
2023年、大学3年時に全日本学生選手権を制し、学ボの頂点に立った彼は、サッカー由来の極太&カットバリバリの脚で迫力のステージを見せるボディビルダーだ。学生時代から注目を浴びてきた男は今年、想像を凌駕する勢いでトップ戦線へ駆け上がった。
躍進の始まりは8月3日の東京選手権。44名がエントリーした最激戦区「ミスター東京(ボディビル)」には昨年準Vの山本俊樹、3位の四十物悠弥など多くの猛者が控えていたが、何と全員を押さえて優勝をはたした。
一般部デビューで激戦区を制す快挙を達成した刈川は、腰のケガを抱えていたこともあり、日本ジュニア男子ボディビル選手権(8月25日)の出場は見送り。次戦はいきなり国内最高峰の舞台、日本選手権(10月6日)への挑戦となった。そんな中でも規格外の男の進撃は止まらない。
ミスター東京以降、自身が弱点と分析してきた背中のトレーニングに注力。バージョンアップした体でステージに立つと、初出場にしてピックアップを突破し、ファイナリストとして木澤大祐、嶋田慶太とTOP3比較審査で並ぶハイライトを生み出した。結果は3位となったが、現役大学生にして3位入賞という結果の衝撃は十分だった。
今年の日本選手権で引退を表明していた木澤大祐(結果的には12月16日~18日のIFBB男子ワールドカップがラスト)の引退や、刈川を含めてファイナリストに20代が6人食い込んだことも含め、ボディビル界の世代交代を印象付けた。
その後、刈川は10月19日の第2回ジュラシックカップのグランドクラスにも出場。実況で“昇龍”と紹介を受けて登場すると、迫力ボディで観衆を虜に。日本選手権でフルパワーを出した後の調整は容易でなかったはずだが、「指導いただいている鈴木雅さんやポージングコーチの吉田真人さんたちと相談しながら作戦を組んで、良い状態にもっていくことができました」と、ポージングやコンディショニングの課題を改善して舞台に。仕上がり体重+2.8kgのボディで優勝を飾り、脚の部の部分賞と合わせて310万円の賞金を手にした。
日本選手権後には「来年は日本選手権で優勝します」と力強く語っていた刈川。昇龍のごとき躍進で2025年も実績を更新できるか。その活躍に注目したい。