プロテインを飲んでいれば肉や魚は食べなくてもOK? タンパク質の純度は高いほうがいい?




今やコンビニやスーパーでも入手できるようになったプロテインパウダー。これを食事の代替としている人もいるのではないでしょうか。しかし体の材料であるタンパク質の摂取は、それだけでは十分とは言えないようです。パーソナルトレーナーであり管理栄養士でもある山田賢児さんに聞いてみました。

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プロテインパウダーは今や全世代に浸透している栄養食品となり、さまざまなメーカーからたくさんの種類が発売されています。手軽に効率よくタンパク質が補給できるという点では、とくに筋トレをしている人にとっては不可欠なものでしょう。

ただ、前回の野菜や果物の例と同じように、商品化されたプロテインを摂っているからと言って、肉や魚を食べなくていいということにはなりません。

たとえばホエイプロテインは牛乳や乳製品に含まれる乳タンパク質のうち約20%とされています(約80%はカゼインプロテイン)。つまりタンパク質の純度として優れているのは事実ですが、そのぶん乳タンパクから失われた栄養素もあるわけです。

筋肉や他の体の細胞をつくるためには、生きた動物の肉から摂取したタンパク質のほうが適しているとも考えられます。また、魚を食べるとEPAやDHAといった脳や血管にとって大切な栄養素も摂ることができます。こうした素晴らしい成分はプロテインパウダーには基本的に入っていません。ですから肉や魚から摂るタンパク質とプロテインパウダーから摂るタンパク質は似て非なるものと考えたほうがいいでしょう。

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トレーニング業界では純度の高いプロテインのほうが価値があると考えられがちです。たしかに筋肉を育てることを最優先する場合はそうかもしれません。しかし、健康の維持・増進を目的とする場合は、純粋なタンパク質しか残されていないプロテインパウダーより、複合的な栄養素を含んだ肉や牛乳のほうが価値があると言えるかもしれません。商品で言えば、純度が低く安いプロテインパウダーのほうが体トータルで見た時には優れた栄養素であるかもしれないのです。

牛乳から脂肪だけを取り除いた「スキムミルク」などは、健康的にタンパク質を摂取するためにオススメできる商品のひとつです。ホエイプロテインのようには精製されていませんが、ミネラルなどの要素が残っているので総合的な栄養価としては優秀です。

トレーニング業界でホエイプロテインが主流になっていることもあり、一般の人もそれがベストの選択と思っているかもしれませんが、栄養補給の一環として摂るのであれば筋肉オンリーではない別の視点を持つことも大切でしょう。

では、牛乳の長所も活用するためにホエイプロテインを牛乳で割って飲んだほうがいいかと問われると、答えはNOになります。なぜならホエイプロテインは消化・吸収のスピードが速いことが大きな特徴であるのに、カゼインが含まれる牛乳で割ると胃の中でゲル状化して滞在時間が長くなり、血中アミノ酸濃度がすぐに上がりにくいと考えられるからです。ですからホエイプロテインを摂取する際は水で割るようにしたほうがいいでしょう。逆にできるだけ長く血中アミノ酸濃度を維持したいという場合は、カゼインプロテインを牛乳で割るのはアリだと思います。

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