魅せたいぶし銀の筋肉美 52歳のマスターズビルダーが競技を続ける理由「終わりがないのがボディビルの最大の魅力」




己の体と向き合ってきた日々が、ステージで輝く筋肉美をつくり上げる。52歳にしてボディビル競技のトップ戦線で闘う井上裕章は、2024年末に大きな勲章を引き寄せた。

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「僕は須江(正尋)さんにも(佐藤)茂男さんにも一度も勝ったことがなかったので、世界の舞台で勝てるなんて夢にも思わなかったです。大会の日は奥さんの誕生日だったので、何かパワーをもらったような感じでした」

井上が輝いたのはIFBB男子ワールドカップ(2024年12月16日~19日開催、有明コロシアム)。世界各国・日本の猛者たちが集う中、ボディビルマスターズ50~59歳級で金メダルを獲得。クラシックボディビル・ゲームズマスターズ40歳以上級も制すと、同部門マスターズ40歳以上級、171cm以下級では4位の成績を残した。

いぶし銀のカッコよさを見せた彼の肉体は、紛れもなく日々の鍛錬の結晶だ。競技の魅力について、井上は熱い思いを語ってくれた。

「終わりがないところですね。それが厳しさでもあるんですけど、最大の魅力でもあると思います。若い頃は、『何歳になったら辞めよう』とか区切りを決めていたんですけど、50歳になったら60代の体かっこいいな、70代の体かっこいいな。80歳まで現役で行けるかなとか考えるようになって、ボディビルの見え方が変わりました。だから若い選手にも、自分の限界に毎年挑戦しつつ、あまり焦らずに終わらない探求を楽しんでほしいと思います」

コンテストに出る限り勝ち負けはつきもの。鍛えた体に優劣がついてしまう葛藤と向き合いつつ、競技を続けるのはその先に喜びが待っているからだ。

「大会で傷つくのが嫌だと思うこともありましたけど、今回世界で光栄な結果をいただけて、こういうことがあるから辞められないです。じつは2024年で競技は終わりにしようと思っていたんですけど、いろんな人の支えや励まし、『もったいないよ』という声をいただきました。50歳を超えてまたボディビルの魅力にハマりましたね」

2015年のジャパンオープン優勝、2024年の国内マスターズ選手権2位をはじめ国内での実績多数。世界選手権にも出場経験を持つ井上。戦いに挑み続けてきたベテランがつかんだ最高の結果は、今後も競技を続けるエンジンとしては十分だろう。今後も情熱を胸に、彼は終わりなき旅路を歩み続ける。

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