「失われた30年」などと言われるバブル経済破綻後の日本。インバウンドの旅行客がやってくる観光の物価が日本人の手の届くものでなくなっているなどと連日ニュースで報じられているが、「爆買い」するのは中国人や欧米人だけではない。バブル期には、日本人がマリンスポーツやゴルフを楽しみに大挙して出かけていた東南アジアの富裕層も日本の産品やサービスを「安い、安い」と言って買い占めている。
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その東南アジアの中でも急成長を遂げているのが世界第4位の人口を抱えるインドネシアだ。日本よりかなり下の平均年齢29歳という若さに満ち溢れた国は、今、順調な経済成長を遂げており、生活に多少の余裕が出てきてレジャーやスポーツを楽しむことができる中間層が着実に育っている。
それにともなって、肥満や生活習慣病などの問題も出てきており、スポーツやフィットネスへの国民の関心も高まっている。そんなインドネシアのフィットネス事情を紹介しよう。
国民的レジャーになりつつある「見るスポーツ」
2018年に開催された「アジア版オリンピック」・アジア競技大会はこの国のスポーツインフラを確実に整備した。この大会には間に合わなかったが、首都・ジャカルタでは、名物の大渋滞を少しでも解消すべく都市鉄道網が急速に整備されつつある。国鉄の電車、地下鉄に続いて整備された小型高架鉄道・LRTの起点、ベロドローム駅のそばにはその駅名通りアジア大会の会場ともなった自転車競技場がある。ある日の夕方ここを訪ねると、その競技場前の広場は多くの人で賑わっていた(写真1)。
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人混みの中心には、にわかごしらえのBMXパークが設けられ、フリースタイルの演技が行なわれていた。人々はオリンピック競技にもなった新しいアーバンスポーツに興味津々といったふうで、会場に設けられた屋台で仕入れてきたフード片手に選手たちに声援を送っていた。レジャーの王道とも言えるスポーツ観戦はこの国で確実に定着してきているようだ。
そんなこの国のナンバーワン・スペクテイタースポーツは何と言ってもサッカーだ。昨年はワールドカップ予選の対日本戦がジャカルタで行なわれた。この試合には日本が勝ったものの、インドネシアサポーターの熱狂ぶりに日本選手が感心したほど、インドネシアのサッカー・サポーターは「熱い」。
そんなインドネシアのプロトップリーグ、リーガ1で一番の人気チームが1928年創立の名門クラブ、プルシージャだ。その本拠地はこの国最大の競技場であるジャカルタ国際スタジアム。3年前に新造された収容8万2000人という開閉式屋根を備えた近代スタジアムは開発の進むウォーターフロントにあって威容を誇っている(写真2)。
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実際にスタジアムに足を運んでみた。チケットはすべてネット販売。スマホでQRコードを示して入る仕組みで、日本より進んでいる印象だ。サポーターの熱狂への対策か、セキュリティチェックはスタンドに入場するまで2回ある。このセキュリティチェックでも見せたQRコードは、スタジアムの入口でも示さねばならないので少々じゃまくさい。スタンドはゲートごとに仕切られ、自分の入場したブロック以外の席には行くことができないようになっている。これもトラブルを未然に防ぐ工夫だろう。「屋根付き」ということで空調があるのかと思ったが、それはなく、場内は非常に蒸し暑い。しかし、その中でもサポーターたちは試合中、絶やすことなくチームに声援を送っていた。