独特の世界観が作り出す前代未聞のフリーポーズ~椎名拓也(後編)【筋肉マニアのビルダー解体筋書】




YouTubeに投稿しているボディビル解説動画が話題の筋肉マニアが、毎週一人のボディビルダーをピックアップして紹介していく連載「解体筋書」。今回は、椎名拓也選手の後編です。
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【ムービー】今後の展望を語る椎名選手のインタビュ

歴史を変えるフリーポーズ

前編では、椎名選手史上最も芸術的とも言えるフリーポーズを紹介しましたが、彼の生み出した極上の作品はそれだけではありません。

恐らく、椎名選手の知名度を一気に高めたであろうフリーポーズがあります。それは、2023年のジュラシックカップです。漫画「ONE PIECE」の大ファンである椎名選手は、過去に同アニメの曲を使用されたことがありました。2023年のジュラシックカップも同様に、「ONE PIECE」のBGMで始まり、そのまま締めるのかと思いきや、急に音楽が巻き戻しされ、彼の合図で誰もが予想できなかった曲が流れ始めました。それは、合戸孝二さんがいつもフリーポーズで使用している「狂気の男のテーマ」とも言える曲だったのです。椎名選手は合戸さんの推薦でこの大会に出場しており、フリーポーズで狂気の男のテーマ曲×2代目狂気の男が披露されたことで、会場はとんでもない盛り上がりを見せました。

そして、昨年も新たな名作が誕生しました。一つは、日本クラス別選手権でのフリーポーズ。音源はAimerの「蝶々結び」という曲でしたが、問題はポージングです。なんとビキニフィットネスのサイドポーズをフリーの中に取り入れたのです。以前から椎名選手は、SNSでビキニフィットネスのポージングを上げられることがありましたが、ここで伏線回収があるとは思いもしませんでした。さまざまな意見が出たフリーポーズだったとは思いますが、ポーズの完成度の高さもあって絶賛されている方が多かったように感じます。ボディビル×ビキニという史上初の作品が生まれた瞬間でした。

最後は、第2回ジュラシックカップです。事前に、「楽しい感じにしたい」と予告していた椎名選手ですが、披露されたのはまるでミュージカルを見ているようなフリーポーズ。ディズニー映画「モアナと伝説の海」の劇中歌「俺のおかげさ」に合わせて、キャラクターが憑依しているような軽やかな身のこなしと力強いポージングが印象的でした。フリーポーズにおいて、楽しげなミュージカル調のものが披露されたのは、史上初だと思います。演技中に、椎名選手の誘導によって会場から手拍子まで生まれており、放送席で見ていた僕もその発想と影響力の高さに、思わずコメントせざるを得ませんでした。

以前、ご本人とお食事に行かせてもらった際に、フリーポーズについて尋ねると「前よりクオリティの低いものはやりたくない」「驚かれるようなものにしたい」と仰っていて、名作を次々に生み出す秘訣はこういう所にあるんだと感動しました。ただ、年々期待値が上がることと自分自身も中途半端なものは披露したくないという思いから、フリーポーズ自体はやりたくないと仰っていたのが印象的でした(笑)。椎名ワールド全開のフリーを見たいなと思うと同時に、無理をしないでやりたいようにやってほしいという複雑な感情になりました…。

今回は椎名拓也選手についてお話しさせてもらいました。ステージ上でのカッコ良さとプライベートでの独特の雰囲気のギャップがすごいと話題の椎名さんですが、そういった部分も彼の魅力だと思います。ご本人なりの信念を持って競技に取り組んでいる姿は、生粋のボディビルダーだと直接お話ししていて強く感じました。今年の日本選手権ファイナリスト入りを大いに期待したいですね!

次回は、「不屈の精神と圧巻の肉体を持つ伝説の”恐竜”」について語らせていただきます。お楽しみに!

▶次ページ:椎名選手のジュラシックカップ2024ステージフォト&ムービー

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