日本ボディビル史に残る異次元の肉体 史上最強が更新された2016年~鈴木雅(後編)【筋肉マニアのビルダー解体筋書】




YouTubeに投稿しているボディビル解説動画が話題の筋肉マニアが、毎週一人のボディビルダーをピックアップして紹介していく連載「解体筋書」。今回は、鈴木雅選手の後編です。
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【ムービー】これが絶対王者の「肩」のつくり方

未だ超えられぬ伝説のチャンピオン

鈴木選手の7連覇がかかった2016年日本選手権。絶対王者として君臨する彼の席を猛者達が虎視眈々と狙う中、鈴木選手は会場中が驚愕するような肉体を披露したのです。

全身皮一枚になるほど絞れた体は、人体模型のような筋肉のセパレートを生み出し、もはや人間とは思えないほど巨大で張りのある筋肉は、他の追随を許しませんでした。この時の鈴木選手の体重は、なんと驚異の83kg。一般的にボディビルダーは身長-100=仕上がり体重であればデカいと言われており、+10kgにもなればファイナリスト級、すなわち化け物と言われるレベルに達していますが、166cmという彼の身長を考えると、その筋肉量が如何に異常かお分かりいただけると思います。

このとてつもない筋量に加えて、適度な発汗があることで、質感においても頭一つ抜けているように感じました。極め付きは、強みである臀筋。ビルパンからはみ出すほどの巨大な臀部には、ストリエーション(筋繊維が浮き出た状態)が綺麗に入っており、その様相はまさしく洗濯板のようでした。

2016年の鈴木選手は、臀部のストリエーションを見せつけることで、仕上がりにおいて他の選手と圧倒的な差を付けており、その上でバルク派を上回るほどの筋肉量を搭載していました。1人だけ別カテゴリーに見えるほどの異質な存在感は、まさに“異次元”。日本ボディビル史に残る完成度を見せた鈴木選手は、ぶっちぎりの優勝を果たし、この年の彼の体は「伝説」として語り継がれるようになりました。

その後、鈴木選手は2018年の日本選手権以降ステージから姿を消し、新たに3人の日本王者が誕生しました。インパクトの強さとプロポーションの良さを兼ね備えた横川尚隆選手、類稀なポージングと弱点のなさが武器の相澤隼人選手、恐竜のような気迫と日本一の二頭筋が魅力の木澤大祐選手。いずれも素晴らしいチャンピオンですが、2016年の鈴木選手の完成度を超える怪物は現れていないと思います。過去を遡っても、評価基準の変化はあれど、彼を超える選手はいなかったのではないでしょうか。それほどまでに、2016年の鈴木選手の肉体は素晴らしく、歴代最高と言っても過言ではないと思います。

今回は鈴木雅選手についてお話しさせていただきました。引退されてから早7年が経ち、最近は若手の台頭が目覚ましいですが、鈴木選手に影響を受けてボディビルを始めた選手は数え切れないでしょう。いつの日か雅さんがステージに帰ってくることを願って、これからもボディビルを楽しみたいと思います。

次回は、ボディビルデビューからわずか4年で日本一になった“筋肉の天才”についてお話しします。お楽しみに!

▶次ページ:鈴木選手のステージフォト&トレーニングムービー

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