スポーツエンターテインメント番組『KUNOICHI』や『HANZO』で一躍知名度を上げた才藤歩夢さんは、近代五種とフェンシングで五輪出場を狙う現役アスリートだ。
近代五種とは1人の選手が1日で射撃、ラン、水泳、フェンシング、オブスタクルスポーツ(障害物レース)とまったく異質な5種目に挑戦する複合競技。その万能性こそが“キング・オブ・スポーツ”と呼ばれる理由である。

そんな近代五種において才藤さんは、2019年・2023年の全日本選手権での優勝実績を持つ。さらに得意種目であるフェンシングを強みとしており、フェンシング単体の選手としても活躍中。2競技での五輪出場を目指す世界的にも稀な存在だ。
彼女が世界を目指すようになったのは、必然ともいえる歩みだった。父は同じ近代五種の選手だった才藤浩氏(ソウル五輪出場、ロンドン五輪代表監督)であり、幼少期から父が指導するトップアスリートを間近で目にする環境で育った。
「物心ついた時には父は選手を引退していて、指導者として活動していました。父についていくと世界で戦う選手が目の前にいる環境があって、自然とオリンピック出場を意識するようになりました」
中学では陸上部に所属し、中学3年生からは近代五種にも挑戦するようになった。国際大会に出場をはたしたものの、ここで海外選手とのフェンシングの実力差を痛感。この経験が現在の彼女の原点になった。
「将来、近代五種でオリンピックに出るには、絶対にフェンシングがネックになると思いました。それで高校ではフェンシング部に入って、弱点を克服すると決めました」

徹底的にフェンシングの競技力向上に努めた才藤さん。みるみるうちに腕前を上げ、今では得意種目として誇れるほどの腕前を身に着けた。大学では近代五種に本格的に取り組み、2019年と2023年には全日本選手権を制覇。その後も金メダリストを目指して日々鍛錬を積んでいる。
「近代五種はまだあまり知られていない競技だと思うので、より多くの人に魅力を知ってもらいたいです。私がフェンシングを得意とするように、出場選手それぞれに得手不得手があるので、1種目である選手がリードしたと思えば、次の種目で他の選手が取り返したり、順位が目まぐるしく入れ替わる展開も大きな魅力です。アスリートモデルとしてメディアに出演することも多いので、そういった機会でも競技の魅力を伝えたいですね」
“キング・オブ・スポーツ”に魅了された才藤さんの挑戦は続く。そんな中、目標とする2028年のロサンゼルスオリンピックに向け、近代五種の種目改定が話題を呼んだ。
(後編に続く)
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