2023年に創部し、学生ボディビル界に風穴を開ける存在として期待がかかる、鹿屋体育大学。現在の部をつくり上げた初代メンバーを中心に話を聞き、彼らの取り組みを探っていく。今回は、中国出身の留学生で、昨年初めてビキニフィットネスのステージに立った程文静さんをフィーチャーする(インタビュー内容は2025年1月時点のもの)。
――博士課程の2年生とのことですが、中国出身の程さんが鹿屋体育大学に入学したきっかけは。
「もともと上海体育大学の修士課程に通っていて、大学で日本語を 4年間勉強しながら修士課程ではスポーツジャーナリズムを勉強していました。在学中に鹿屋体育大学に交換留学生として来日しようと思っていたんです。ところが、ちょうどコロナ禍でそれが叶わなかったので、博士課程から入学することになりました」
――大学の博士課程ではどういった勉強を?
「ボディビルダーを対象にしたジェンダーとの関係の研究をしています。将来的には、大学の教員になりたいと思っています」
――バーベルクラブに入部後、2024年の全日本学生オープンボディビル選手権では、ビキニフィットネスの選手としてステージに立ちました。競技経験はあったのですか?
「中国にいたときはスポーツも全くやってなかったのですが、修士課程の2年生のときに、趣味で筋トレをはじめたんです。そうしたらどんどん筋肉がついていって、周りの人からから『大会に出てみたら?』と言われるくらいになりました。その頃は大会に出ることはなかったのですが、修士課程の卒業後はどういう道に進もうかと考えたときに、一生の研究とするのなら自分の興味があるものにしたいと思い、ジェンダー、とくに女性ボディビルダーを研究対象とすることにしたんです。それで鹿屋体育大学に来たタイミングでバーベルクラブに入部し、研究も続けつつ、昨年に初めて大会に出場してみました」

――初めてのステージはいかがでしたか?
「もちろん緊張しましたが、いざステージ立ってみると、審査員の方々が自分のポージングに対してリアクションをとっている顔を見たら、緊張が一瞬でなくなりましたね(笑)。ただ、ビキニフィットネスに出場した選手は2人だけでちょっと残念だなと思ったので、今後機会があれば、多くの女子選手と一緒にステージに立って大会を楽しみたいと思っています」
――競技をやりつつ今は研究者の道を歩んでいるとのことですが、もう少し具体的に、話せる範囲で研究内容を聞かせていただけますか。
「ボディビルダーには男性も女性もいますが、その線引きが自分の中でわからなくなってきたというか、その違いはいったい何なのだろうと。それをもっと知りたいなとふと思ったところから、研究がはじまりました。男性も女性も、力強さだけでなく、ボディビルという競技においては美しさも求められています。では、その美しさとはいったい何なのか、どういうところが魅力として強調されるべきなのか…そんなところを、これからもっと研究していきたいと思っているところです」
――最後に、程さんが感じるトレーニングの魅力を教えてください。
「自分自身が今取り組んでいるのは文系の研究なので、どうしてもパソコンで調べたり、文献を読んだりという時間が多くなってしまいます。でもそんなときにトレーニングをしてパワーを発揮すると、気分もすっきりするし、なんか新しい自分になれる気がするんです。それが、私が感じるトレーニングの魅力ですね」