「フツーのアイドルに戻れなくなる」怪力に気づいた渡辺未詩、筋トレ継続でプロレスの才能開花




東京女子プロレスのトップレスラー・渡辺未詩は「リアル二刀流」である。現在、リングで闘う傍ら、アイドルグループ『アップアップガールズ(プロレス)』のメンバーとしても活躍中。

7月21日、東京女子プロレスの大田区総合体育館大会でタッグ王座に挑戦するかと思ったら、翌週の26日には上野恩賜公園水上音楽堂で開催されるアイドルイベント『ガラフェス』に出演。その翌日からは真夏のシングルトーナメント『第12回東京プリンセスカップ』に出場、と目まぐるしくプロレスラーとアイドルのスケジュールが絡み合う夏になっている。

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ただ、彼女の場合、ちょっと特殊なケースで、プロレスラーになるまで、まったくプロレスを見たことがなかった、という。アイドルになるためにアップアップガールズ(プロレス)のオーディションを受けただけの話で、プロレスに関してはゼロからのスタート。だから道場に通っての練習は「?」の連続。ブリッジやスクワットはまだわかるとして、プロレスの技を知らない彼女にとって、開けても暮れても繰り返される受け身の練習ばかりは「私はいったいなにをしているのだろう?」と不思議な気持ちでマットを叩き続けていたのだという。

この時点では彼女自身もまったくもって「才覚」に気づいていなかったのだが、基礎トレーニングを積んでいくにつれ、結構なスピードで筋肉がついていく。本人は『これ以上、筋肉がついてしまったらフツーのアイドルに戻れなくなる』と悩んだこともあったというが、当時を知る選手によると「あれで悩んでいたの? 悩んでいる人はあんなに真摯にトレーニングに向き合わないよ(笑)」。こうして渡辺未詩はどっぷりとプロレス沼にハマっていった。

そして、ついに気づいてしまう。「えっ、私ってこんなに力持ちだったの?」と。

プロレスはもちろん、格闘技の経験もなかったから、いままでの人生で自分の秘めたるパワーに気づくタイミングが訪れないままだった。「プロレスをやっていなかったら、きっと、自分の力に気づかないままおばあちゃんになっていた」と笑う渡辺未詩だが、きっと世の中にはそういう人がたくさんいるのだろう。もし野球をやっていたらメジャーリーガーになれたのに、という才能の持ち主がまったくスポーツをやらないまま……というケースはきっと山ほどある。そういう意味では偶然にもプロレスと出逢えた渡辺未詩は幸せ者だし、これだけの逸材を発掘できたことはプロレス業界的にもラッキーだった。

秘められた怪力と鍛え上げられた筋肉が融合したら、プロレスをまったく知らなかった少女はチャンピオンになっていた。ふたりの敵をまとめて投げ捨てるボディースラムや、もはや世界一の使い手といっても過言ではないジャイアントスイングは「えっ、この子、アイドルなんだよね?!」と初見のお客さんが絶句する豪快さ。トップに立った今でも「道場に行っても、ジムに行ってもいつも未詩さんがいる。私ももっとがんばらなくちゃ!」と後輩たちが焦るほどの練習量をこなしている。ひょっとしたら、この先、まだ本人も気づいていない「秘められた才能」がリングの上で発見されるかも? トレーニングはウソをつかない!

文/小島和宏
写真提供/東京女子プロレス