佐久間編集長のパーソナルトレーナー百人斬られ(仮)Vol.45~小野明洋 後編




VITUP!編集長・佐久間が全国のパーソナルトレーナーさんを巡っていく「パーソナルトレーナー百人斬られ(仮)」。今回は小野明洋トレーナーの後編。ミット打ちでスポーツパフォーマンスを上げていく小野さん独自のトレーニング法、「ストライクムーブメント」を体験させてもらいました。

【動画】佐久間編集長が「ストライクムーブメント」にチャレンジ

「ミット打ちでスポーツパフォーマンスを上げていく」と言われても、未知の世界のため頭の中は「?」マークです。百聞は一見に如かずということで、さっそくトレーニングを開始。

ウォーミングアップもグローブをつけたミット打ちを用いて行ないます。足踏みをしながらパンチ、そしてヒザ蹴り。それぞれ前進するパターンと後退するパターンで行ないます。さらにレスリングのバタ足をしながらのパンチで息を上げます。

ウォーミングアップが終わって本格的なトレーニングがスタート。陸上競技のスプリンター用のミット打ちから行なっていきます。

まずは姿勢をつくるところから。スクワットポジションでしゃがんで手を前に出して、上から押されても負けないポジションをつくります。この姿勢から手をアッパーパンチのようにスイングする形でパンチ。「まずどうやって地面を押したら力が上にいくのか、自分で理解することが大事です。そこから前方向の出力に変えていきます」(小野さん)

同じ姿勢から片足に体重を乗せて体を少し内旋させてからパンチ。走るときの腕振り動作のように反対の腕も動かします。しっかり踏ん張ってお尻とハムストリングに力が入っていればOK。「ヒザ関節優位ではなく、股関節優位で力を発揮する動きを覚える練習です。体が流れないように引き込んだものをプッシュしていくことで力発揮になります」(小野さん)

今度は片足を下げて(軸足のヒザの位置、お尻の位置は動かさない)、足を戻してからのパンチを左右交互に。ここで左右の動きの差が見えてきます。しっかり止める動きができていないのでそれを修正していきます。

野球のバッティングの構えをとった際、横から押されてバランスを崩してしまうのは、外側に重心が逃げてしまっているから。左足を前にしての左フック連打、右足を前にしての右フック連打で戻って止まったときのエラーをチェック。

私は日常生活は右利き、スポーツは左利きという変則で、かつ選手時代に左半身にケガをしていたこともあって、左側でキャッチ(止まる・ためる)するのがうまくできておらず、これを修正していきます。

最初のスクワットポジションでは上への出力でしたが、今度は外脚での横への出力です。同じスクワットポジションで横から押されても安定して踏ん張れる姿勢をつくる。

左足の内側に力が入っていると、しっかり踏ん張れる。「さっきまでは左足の小指側で押すエラーが出てたけど、親指、土踏まず側で地面を押すと横から押されても踏ん張れます」(小野さん)

左でしっかりキャッチできるようになったら、足の付け根を伸ばすように上がりながらパンチ。しゃがんだ姿勢から地面をプッシュして伸びあがります。

この伸び上がりをさらに進化させます。その場でひねって沈み込んで、ジャンプして伸び上がって“昇竜拳”の要領でパンチして一回転。地面をしっかり押せていれば回転することができます。

今度は横に一歩ジャンプして、戻りながらのパンチ。横に飛んだときにしっかりキャッチできていれば、戻ることができます。これも右ではしっかりキャッチできているのに対して、左は不安定。ということで、このエラーも修正していきます。

後ろに下げた右足を前に踏み出しながらのパンチを3発。そして3発打ったら止まってバランスをチェックします。同様に反対側も3発打って止めてチェック。「受け止めてからプッシュするという流れがダッシュには必要なので、この動きはスプリントにつながってきます。大事なのはパンチのフォームではなく、戻れる角度で入っていくこと、ブレーキをかけた方向にプッシュできるかということです」(小野さん)

続いてはこの流れから左右のパンチを打ちながら前進。この動作のスピードをドンドン上げていくと、ダッシュの動作につながっていきます。

ヒザ蹴りで前に進む動作に続いては、フック→ヒザ蹴りで前へと進んでいきます。ここでのヒザ蹴りは首相撲からヒザ蹴りのように引き込み動作を入れます。この動きが走る動作につながります。

続いては飛びヒザ蹴り。ヒザ蹴りをしないほうの足での出力発揮になります。飛びヒザ蹴りの後は二段飛びヒザ蹴り。空中で足を入れ替える二段飛びヒザ蹴りは、短距離走での素早い足の入れ替え動作につながります。骨盤が立った状態でしっかり出力発揮できないと、飛びヒザ蹴りでの足の入れ替えはできません。

スプリンター用のミット打ちトレーニングはここまで。次はスキー選手用の内足のトレーニングです。

強いローキックを出すためには蹴り足よりも支えている軸足が大事。足をクロスオーバーした姿勢をつくり、横から手を引っ張られてもバランスを崩さないようにします。このとき、足の親指側に体重が乗ると崩れてしまうので小指側で踏ん張ります。この姿勢を保持できるとスキーのターンに生きてきます。また、他の競技でも大きく切り返す動作につながります。

この姿勢を身につけたところで、手を引っぱられても軸足でバランスをとってローキック。軸足の踏ん張りが効いていると、強く蹴ることができます。

以上でトレーニングは終了。動きの中で出たエラーを修正すると、ミットを強く打てたり、蹴れたりして、動作が変わっていることが実感できました。また、姿勢をつくるため、出力発揮するために必要な筋力もわかるので、強化するポイントも明白になります。

ミット打ちの快感を味わいながらも動きの修正ができるストライクムーブメントは、きつさの中に爽快さもあり、とても楽しいトレーニングでした。

というわけで今回はここまで。小野さん、どうもありがとうございました。

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