今年も「自衛隊プレミアムボディ」が開催された(8月10日、横浜ランドマークホール)。衛隊員および防衛大学生のみが参加でき、規律と鍛錬の中で培った肉体美を競う特別な舞台だ。航空自衛隊所属の稲付峻(42)は、本大会で総合クラス航空自衛隊優勝、そして悲願のグランプリファイナルを制した。9年間の挑戦の末に手にした栄冠だった。
福岡出身で、妻と3人の娘を持つ父親である稲付。最近転勤となり、現在は地元を離れている。慣れない寮生活を送るようになると、大会に向けての食事管理に苦戦した。細かな栄養計算が必要なボディメイクにおいて、食堂の食事が中心だと栄養価や分量の細かな調整が困難だったからだ。
しかし、「今年こそは必ず獲りたかったので、強い意志で取り組みました。調整が厳しくても、9年間の挑戦を言い訳で終わらせたくなかったんです」と、自ら食材を買い足すなど試行錯誤しつつ食事管理を徹底。家族や周囲からの応援も彼に力を与え、調整期間を走り抜けた。
ステージでは鍛え上げた肉体を堂々と披露。規律ある立ち居振る舞いと鍛錬を重ねた逆三角形のボディが照明に照らされ、観客の視線を引き込んだ。グランプリファイナルで名が呼ばれた瞬間、彼の胸に去来したのは、2年連続であと一歩届かなかった悔しさと、積み重ねた努力が報われた喜びだった。「あの光景は忘れられない」と振り返る。
それでも本人は「まだ理想の体には届いていない」と言う。今後については「グランプリ防衛が目標ですが、無理に出場するのではなく、自分が納得できる体を仕上げて挑みたい」と冷静に見据える。後進へ刺激を与えつつ、アドバイスにも力を入れたいと考えており、その姿勢はコンテスト競技者としてはもちろん、自衛官としても模範的だ。
任務と家庭、そして肉体を鍛えることを両立し続けてきた9年。その歩みは、同じ舞台を目指す人々に大きな勇気を与えている。
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