ミドルエイジからの減量は難しい――。多くの人がそう考える中で、61歳の田中克尚は自らの体でその常識を覆してみせた。かつては体重90kg、体脂肪率30%を超える肥満体型だったが、50代半ばで一念発起。現在はBEST BODY JAPAN(ベストボディジャパン/BBJ)の舞台で輝かしい成績を収めるまでに変貌を遂げた。その成功のカギとなったのが、独自の食事管理だった。

「以前は菓子パンを1度に6個も7個も食べて、そのあとラーメンや丼ぶりを平気で食べる。暴飲暴食が日常でした。息子から“ダメ親父”と言われて、自分でも鏡を見て危機感を覚えたんです」
そこから始めたのが徹底的な食生活の見直しだった。一時は“食べないダイエット”で不健康な痩せ方をしてしまったが、そこからたどり着いたのが愛してやまなかった白米の置き換えだ。
「白米は大好きで、一度食べ始めると止まりませんでした。だから“食べない”と決めて習慣にしました」と考えて置き換えたのが、スーパーで買える和惣菜や野菜中心のおかずだ。コロッケや唐揚げのような揚げ物ではなく、かぼちゃ、大根、きのこ、タコの酢の物といったシンプルな料理を選び、自然と糖質を抑えつつ栄養を確保する工夫をした。白米を食べない分、トレーニング2時間前に大福を食べ、トレーニング後にはわらび餅を食べるなど、必要な糖質の摂取も適宜行なう。
さらに習慣化したのがプロテインヨーグルトで、1日最低でも4個は食べる。そのうち朝と夜のヨーグルトにはクレアチンをそれぞれ2.5g入れるのが毎日のルーティンだ。「デザート感覚で楽しめて、しかもタンパク質をしっかり補給できます。毎日続けるにはストレスの少なさが大事なんです」と合計でおよそ60gのタンパク質を摂取している。
最初の2か月間は有酸素運動とカロリー制限を中心に12kgの減量に成功。その後は筋トレを加えて体を引き締め、今では大会時に62〜63kg、体脂肪率6〜7%という仕上がりを誇る。普段の体重も67〜68kgを安定してキープし、かつての90kgには「もう二度と戻りたくない」と笑う。
ボディメイクに挑んだことで、人生そのものも変わった。体型の変化だけでなく、時間の使い方、人間関係、そして自己肯定感まで前向きに変化したという。
「年齢を重ねるとケガのリスクもあるので、無理せずしっかり食べて、しっかり動く。それを継続するのが大事です。60歳を超えても“まだ成長できる”と感じられることが、ボディメイクの一番の魅力ですね」
極端な我慢ではなく、自分に合った食事習慣を見つけること。その積み重ねが彼を肥満体型からコンテスト優勝へと導いた。年齢を理由にボディメイクに二の足を踏んでしまう人にとっても、この食事術は心強いヒントになるだろう。
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