50代中頃から体づくりに邁進 還暦サラリーマンが続ける「筋肉貯金」の目的




「まさか勝てるとは思わなかったです。相手はレジェンド中のレジェンド、坂上成人さんでしたから。同じ舞台で競えただけで、本当にうれしいです」

8月23日に行なわれたBEST BODY JAPAN(ベストボディジャパン/BBJ)「東京大会」。レジェンドクラス(60歳~年齢無制限)でグランプリを獲得した海老名直は、優勝の実感を噛みしめながらそう語った。

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「昨年のモデル・ジャパン千葉・君津大会でも優勝しましたが、あの時は出場者も少なくてレベルも違いました。今回は全力で準備し、結果もついてきた。喜びは大きいです」

今大会に向けては、「水抜き、塩抜き、カーボアップ。仕上げの体づくりの部分が評価されたのではないかと思っています」と直前1週間の追い込みに全力投球した。

トレーニングを始めたのは6年ほど前のこと。痩せようと思い立ったのが発端だ。

「当時はぽっこりお腹の中年体型で、最初はダイエットのために有酸素をやっていました。少しずつ筋トレに切り替えていくうちに、カラダづくりの楽しさに目覚め、本格的に取り組むようになりました」

モチベーションの源泉は、将来を見据えた考え方にある。

「5年後、10年後を考えた時に、今しっかり筋肉をつけておかないと老後を楽しめない。だから『筋肉貯金』をしておこうと思ったんです。銀行にお金を貯めるのと同じ。筋肉は将来の楽しさを保証してくれる『財産』です」

会社員として、還暦を迎えた今も現役で働く。仕事とトレーニングの両立は容易ではない。

「会社に行く前に1時間半、帰宅後にも30分から1時間。忙しさを言い訳にせず、時間をうまく使い、習慣化することが継続のコツです」

家族の理解も支えとなっている。

「子どもたちも応援してくれますし、家族から『がんばって』と言われるのが一番の力になります」

次なる目標は11月の日本大会。勝利のために必要なことは何だろう?

「秘策はありません。毎日の積み重ねを大事にして、コツコツやるだけです。基本なくして応用はありませんから」

還暦を迎えてなお進化を続ける体と心。その姿勢は、年齢を理由に挑戦をためらう人たちの背中を後押しする。

「年を重ねても好きなことはできる。今のうちにトレーニングをしておけば、未来はもっと楽しくなる」

彼のボディメイクに取り組む姿勢は、健康で生き生きとした人生を送りたいすべての人たちに勇気を与えている。

取材・文・写真/石川哲也